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「成果あったの?なかったの…?」
~地域生活支援の在り方に関する検討会終了する
2004/07/07
  「これはまさに検討会のテーマ、振り出しに戻った感があり、昨年1月の行動に参加した一員としてはこの案には同意できない」と、太田(委員)は述べた。7月6日(火)、障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会(第19回)が行われた。
 それというのは、「国庫補助基準及び長時間利用サービスの在り方に関する議論の整理(案)」の中で「国庫補助基準については、今後の実績から、市町村ごとのサービス利用量の変化や、市町村への国庫補助金の配分の具体的状況を把握し、サービス水準の低い地域の底上げという役割が適切に果たされているかを検証するとともに、より細やかな障害種別等の区分の必要性等を含め、その見直しを検討すべきである」等の表現がされていたからだ。
 これに対し、高原障害福祉課長は「色々な議論もあったことは事実で、誰の目にも内容が分かるような方向で文章を工夫し修正をしたい」と答えた。
 さらに中西委員と大濱委員は、事務局が提起している包括報酬システムに反対の立場をとった。包括報酬システムとは全身性障害者等で長時間の介護サービスが必要な人については「サービス利用時間の公平を図る観点等から、1月当たり相当量を超えるサービス提供については、包括的な報酬体系を導入する」といったもの。中西、大濱両委員は「現状では学生を集めて介助体制を組むことは困難で、これを導入すると地域で暮らす障害者の死活問題となる」とした。事務局案によれば、来年度からの導入予定としている。
 この包括報酬システムについては、「財源に限りがあるのでひとつのものさしとして必要」や「自立をめざす全身性障害者に24時間介助保障しているのは欧米では趨勢」、「介護保険への統合を視野に入れれば当然のこと」等々の意見が出された。
 また、事務局案では、「現に長時間サービスを利用している障害者を大別すると、次の類型がある。1、生命・身体の維持等に重大な支障が生じるため、長時間の継続したサービスを利用している者。2、1以外の者で、社会参加活動等のために長時間のサービスを利用しているもの」と述べられている部分があり、それについては、中西委員、大熊委員、そして太田が「2類型にきれいに区別できるものではない。この考え方でいくとしたら、自治体のサービスは硬直したものになる可能性がある」と指摘した。
 これに対して高原課長は、「特に医療サービス等が必要な人がいるという意味で、その人たちが社会参加をしてはいけないということではない。うまく伝わらないとしたら、表現を工夫したい」と答えた。
 この日の最終回、事務局から「国庫補助基準及び長時間利用サービスの在り方に関する議論の整理(案)」とともに、「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する議論の整理(案)」が出され、各委員がこれらについての意見を出した。
 「非常に抽象的なまとめ。財源問題を踏まえながら長時間サービスのあり方についてより深く研究すべき」(森祐司委員)「いわゆる社会通念といったものを変えていく作業も重要な課題であるはず」(大熊委員)「財政状況が極めて厳しい。この検討会で何が得られたのかという疑問が残る」(安藤委員)「抽象的な議論よりもっと具体性を持った議論が必要である」(笹川委員)「障害者にもっと積極的に社会を支えていこうとする姿勢が求められる」(竹中委員)「介護保険を活用することも関心事だが、支援費制度を改革していく視点も重要」(京極委員)「厚労省は介護保険統合を正面から論議すべきで、今回の案には何も言及していない」(佐藤委員)「東京都が出している地域生活支援3か年計画のようなものを国としてもつくるべき」(板山座長代理)等々の発言があった。
 とうとう19回にわたった検討会は終了した。安藤委員が指摘したように「この検討会で何を得たのだろう」という脱力感が残ったことは否めない。しかし、昨年のホームヘルプサービス上限設定問題から端を発しつくられたこの検討会、当事者たちが“地域の中で当たり前に生きたい、そういうサポート体制を築いてほしい”というメッセージを発し続けた。たしかに他の委員や事務局とかみ合っていたとは言い難く、平行線が多かったが、そういう議論の場が設定されたことは意義あるものだったと言える。当事者の傍聴も多かったことも特徴的である。後半の流れは一般財源化・介護保険統合の議論の中で、見えにくくなった感はあるが、今日の状況の中で、もしこの検討会がなかったらと考えると、一定の役割を果たしたと言え、今後これをどう活かすかがそれぞれの立場で問われる。
 上記2つの事務局案は、修正後、委員に配布し、場合によれば再修正し、“検討会の報告”としていくことで確認された。

  (7月6日発行・障害連FAXレターNo.82(編集人・太田修平氏 = 中央障害者社会参加推進協議会委員)より転載


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