平成30年度(2018年度) 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 事業報告  平成30年、日本身体障害者団体連合会(以下、日身連という。)は創立60周年を迎え、記念誌の発行と記念の集いを開催し、日身連の事績を振り返るとともに、日身連の展望について認識を共有する機会をもつことができた。そして、社会福祉法人の責務として、障害理解の啓発促進に向け、地域社会への働きかけとともに事業の取組みに努めた。  ユニバーサルデザイン2020行動計画の施策の着実な実施に向けた活動として、国や政党との会議やヒアリングにおいて具体的な提案や意見を表明するなど精力的に活動を行った。また、民間企業等からの協力依頼においては、継続した信頼関係が築けるように相互交流への働きかけに努めたほか、日身連の活動をより広く周知するため、内閣府連続セミナーへの初参加や公務員研修への講師派遣の実施等、対外的なことにも積極的に取り組んだ。  さらに、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)や北海道胆振東部地震といった大規模災害への支援や、国等行政機関の障害者雇用の水増し等の重要な問題に関しては、迅速かつ適切な対応及び措置が図られるよう、国や政党に対する意見・要望活動に専念した。  日身連の重要課題である財政や組織体制の安定強化については、財政の安定化に対する検討委員会(以下、財政委員会という。)並びに組織体制強化及び障害者施策等に関する検討委員会(以下、組織・施策等委員会という。)において、加盟団体の意向を踏まえ協議検討を行った。さらに、日身連の事業活動や要請行動等の見える化に心掛け、加盟団体への情報発信・提供を図るとともに、情報の共有に努めた。   日身連の主な事業: 1. 『第63回日本身体障害者福祉大会ぐんま大会』の開催  平成30年6月13日(水)から14日(木)の二日間にわたり、日身連並びに群馬県身体障害者福祉団体連合会主催により全国から1,700人超の参加者を迎え、高崎アリーナ(群馬県高崎市)等で盛大に開催された。  大会初日(13日)は、ホテルメトロポリタン高崎(群馬県高崎市)において、第1回定時評議員会および政策協議(テーマ:心のバリアフリーの推進にむけて~地域社会における日身連と加盟団体の役割について~)を開催した。政策協議では、「ユニバーサルデザイン2020行動計画がめざす共生社会と障害者団体の役割について」と題し、御手洗潤氏(内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局参事官)に基調講演を、シンポジウムはシンポジストに杉田安啓氏(群馬県身体障害者福祉団体連合会会長)、小西慶一氏(東京都身体障害者団体連合会会長)、浅香博文氏(札幌市身体障害者福祉協会会長)、コメンテーターに御手洗潤氏と阿部一彦日身連会長、進行を中原義隆氏(組織・施策等委員会委員長、福岡市身体障害者福祉協会会長)で行った。二日目(14日)は、大会式典及び議事を行った。式典では、55名の方に会長表彰が授与された。議事では、平成29年度事業報告及び平成30年度事業計画が報告され、大会宣言、大会決議が満場一致で採択された。   2. 国及び政党等に対する要請行動並びに審議会等への積極的参画 (1) 障害者政策委員会(内閣府)、社会保障審議会障害者部会、労働政策審議会障害者雇用分科会(厚生労働省)や本年度から設置されたユニバーサルデザイン2020評価会議(内閣官房)、移動等円滑化評価会議(国土交通省)をはじめとする中央省庁で開催された委員会等の協議の場において意見具申に努めた。また、加盟団体に対し、委員会や施策の動向に関する情報提供を行った。 (2) 2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会の開催にむけて開催された府省庁及び組織委員会等関係機関で行われた会議に参加し、障害当事者の視点から提案提言を行った。 (3) 国に対する『日身連要望事項』については、理事会の審議を経て、正副会長会及び組織・施策等委員会において要望事項の内容の取りまとめを行い、関係府省庁からの文書回答を求め要望書を提出した。(加盟団体との情報共有を図るため、回答冊子を配布予定。) (4) 心のバリアフリーの推進に関しては、中央省庁や政党、民間事業者との協議や意見交換の場において、市民社会の一層の理解啓発と促進が図られるよう提案に努めた。また、国や関係機関からの実証実験やヒアリング、アンケートへの協力のほか、一般企業や大学関係者等との意見交換にも積極的に努めた。 (5) ユニバーサルデザイン2020行動計画の施策の実施に伴い、ホテル・旅館客室、駅車輌等のバリアフリー化の促進や情報発信のあり方等に関する課題改善の要望とともに、施策の改善状況に関し加盟団体との情報共有に努めた。 (6) 心身障害者用低料第三種郵便物制度の要件問題については、日本障害フォーラム(JDF)及び全国障害者団体定期刊行物協会連合会と連携し要望を続けてきた。引き続き、問題解決にむけて、総務省・厚生労働省・郵便事業株式会社との協議交渉に努める。 (7) 改正バリアフリー法及び関連施策、旧優生保護法による強制不妊手術問題、改正障害者基本法・障害者虐待防止法・障害者差別解消法の法施行後の見直し、学校卒業後の障害者の生涯学習の取組等について、政党及び関係府省庁へ要望を行った。また、国等行政機関の障害者雇用の水増し問題では、声明文を発表したほか、衆議院厚生労働委員会で参考人として阿部一彦会長が意見表明を行った。また、労働政策審議会障害者雇用分科会や政党ヒアリングにおいて意見要望を行った。 (8) そのほか、2019年10月の消費税率引き上げに対する低所得の障害者への適切な措置が図られるように要望を行った。 3. 災害時における対応について (1) 東日本大震災の教訓を踏まえ、国や地方自治体での取組が一層図られるよう要望を行うとともに、東日本大震災以降、熊本、大阪、北海道での大規模地震や豪雨、大雪等の大規模災害による被災障害者への対応や防災減災に向けた取組について、全国的に強化されるよう要望に努めた。 (2) 平成30年7月豪雨(西日本豪雨)及び北海道胆振東部地震への対応では、対策本部を日身連内に置き対応に努めるとともに、加盟団体はじめ全国へ支援金の呼びかけを行った。 (3) 加盟団体からの要望により大規模災害への対応が迅速かつ適切に対応できるように日身連の対応方針を定めた。 4. 中央障害者社会参加推進センター事業の拡充 (1) 平成30年8月3日(金)、衆議院第二議員会館多目的会議室(東京都千代田区)において、「障害者110番運営事業研修会」を開催した。午前は、「全盲弁護士の対話術~障害理解の牽引者への期待~」をテーマに大胡田誠氏による講演と、午後は、相談員が描く相談体制を課題に阿部一彦会長の進行でグループ討議を行った。 (2) 身体障害者相談員の研修及び交流会の場として6ブロックで開催した身体障害者相談員研修会(延べ1,861人)に対し、講師派遣の調整や開催費の一部助成を行った。また、参加者への研修に対する意識調査を目的にアンケートを行った。 ※開催状況/東北・北海道ブロック平成30年11月15日秋田県秋田市、関東甲信越静ブロック2019年1月22日東京都千代田区、中部ブロック平成30年10月24日~25日愛知県名古屋市、近畿ブロック平成30年11月20日奈良県橿原市、中国・四国ブロック平成30年10月5日広島県広島市、九州ブロック平成30年11月15日福岡県福岡市 (3) 平成31年3月14日(木)、東京都障害者福祉会館(東京都港区)において、中央障害者団体及び学識経験者等で構成される中央障害者社会参加推進協議会(14団体)・中央障害者社会参加推進協議会部会(11団体・者)合同委員会を開催した。国からは、加藤晴喜氏(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室室長補佐)に出席いただき、今年度の事業報告と来年度の事業計画を報告したほか、障害者虐待防止法の課題や教育現場における心のバリアフリーの啓発促進の取組事例などの紹介を行った。加えて、中央並びに地方障害者社会参加推進センター事業のネットワークの強化や事業の活性化に向け意見交換を行った。 5. 障害者相談支援事業の充実 (1) 上掲の通り、個々の障害者相談員の相談活動を支援できるようスキルアップや情報交換の場の提供やブロックで開催する障害者相談員研修会への助成の実施や府省庁等へ講師の派遣依頼・調整を行う等、事業の向上に努めた。 (2) 平成31年2月20日(水)、東京都障害者福祉会館(東京都千代田区)において身体障害者相談員全国連絡協議会理事会を開催し、今年度の事業報告・決算見込及び来年度事業計画・予算案について審議した。そのほか、地域における障害者相談員活動の活性化にむけ意見交換を行った。 (3) 身体障害者相談員全国連絡協議会の会員を対象に、「相談員会報」(平成30年度版第20号8000部、年1回)を発行し、障害関連の制度や日身連の活動の情報提供、共有に努めた。 (4) 日身連ホームページや機関紙『日身連』を通し、相談活動に役立つ情報提供にこころがけるとともに、相談員活動についての広報にも努めた。 6. 教職員共済生活協同組合・全労済助成事業 地域社会と障害者団体の関わりと障害者理解にかかる啓発促進事業として、60年にわたる日身連の運動の事跡と社会福祉法人としての活動や、障害者制度改革に対する障害当事者団体の関わりの一例を活動報告書としてまとめた記念誌を出版、無償配布した。また、併せて、地域とともにつくる共生社会をテーマに、障害者団体及び関係者・団体を対象に平成31年3月26日(火)、参議院議員会館(東京都千代田区)において記念の集いを開催した。基調講演には高橋一郎氏(内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局企画・推進統括官)、シンポジウムのシンポジストとして、田仲教泰氏(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室室長、岩川勝氏(内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局参事官、阿部一彦会長、進行は飯塚善明常務理事兼事務局長、総括は竹内正直氏(日身連60周年記念誌編集委員会委員長、山梨県障害者福祉協会理事長)がつとめた。 7. 障害及び障害者理解の啓発促進 (1) 心のバリアフリーの啓発促進の観点から、以下の事業を行った。 ① 上掲のとおり、「第63回日本身体障害者福祉大会ぐんま大会」政策協議における基調講演やシンポジウム及びアニメーション動画の視聴 ② 人事院公務員研修 心のバリアフリーをテーマとする政策立案の課長補佐級研修への講師派遣  平成30年8月29日(水)西ヶ原研修合同庁舎(東京都北区)  講師 阿部一彦会長 平成30年9月5日(水)人事院公務員研修所(埼玉県入間市)  講師 平井晃氏(理事、横浜市身体障害者団体連合会理事長) ③ 日身連シンポジウム「ユニバーサルデザインの街づくりを考える~好事例からみる街づくりの展望と期待~」(内閣府障害者週間連続セミナー)  平成30年12月7日(金)有楽町朝日スクエア(東京都千代田区) シンポジスト 大日方邦子氏(パラリンピアンズ協会副会長)・浅香博文氏(札幌市身体障害者福祉協会会長)・阿部一彦会長、コメンテーター 岩川勝氏(内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局参事官、コーディネーター 髙橋儀平氏(東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授) (2) 障害者の社会参加と福祉機器開発等の促進の観点から、以下の事業に協力した。 シーズ・ニーズマッチング交流会2018(テクノエイド協会/厚生労働省受託事業) 平成30年12月18日(火)~19日(水)大阪マーチャンダイズマート(大阪府大阪市)  協力:大阪市身体障害者団体協議会 平成31年1月9日(水)~10日(木)FFB HALL福岡ファッションビル(福岡県福岡市)  協力:福岡市身体障害者福祉協会 平成31年2月13日(水)~14日(木)TOC有明コンベンションホール(東京都江東区)  協力:千葉市身体障害者連合会 8. 日身連の基盤強化  最重要課題である財政安定化及び組織体制強化については、2つの検討委員会を中心に取組んだ。 (1) 財政基盤の強化  財政検討会6回(合同含)開催 加盟団体の年会費(分担金)の見直しにより2019年度からは新たな枠組みで年会費制度をスタートさせた一方、収入の増額についての検討を進め、機関紙『日身連』への協賛広告掲載に関し、第3回定例理事会(平成31年3月7日)及び第2回定時評議員会(平成31年3月26日)へ議案提出、承認可決により2019年度から協賛広告について本格的に取組む。 (2) 政策体制の強化  組織・施策等検討会5回(合同含)開催 評議員会で継続審議となった議案(会長報酬の見直し、理事定数減の見直し、評議員定数減の見直し)について、各加盟団体に徴した意見や提案を参考に協議検討を行い、第2回定時評議員会(平成31年3月26日)へ理事会提案として提出を行った。理事定数の見直しについては、組織・施策等検討会で新たに検討することとし、ほかは現行通りで承認可決された。 府省庁の審議会等で検討されている事案及びハード及びソフト面に関するバリアフリー関連の事柄に関してはヒアリング含め積極的に取組むとともに、加盟団体等や関係団体等との連携や情報共有に努めた。 9. ホームページ及び機関紙の充実  ホームページ及び機関紙『日身連』を通し、一層の読者を獲得できるように、日身連及び加盟団体の事業活動を広く周知していくとともに、障害者関連施策の動向等幅広い情報提供に努めた。特に、関心の高い分野や周知広報が必要とされる事柄(障害理解やバリアフリー関係、パラレルレポート等)については、ホームページや機関紙3面等を介して情報の発信に努めた。  また、ホームページに会員専用ページを設け、最新の障害者施策等の情報や地域からの情報(加盟団体発)の発信に努めた。機関紙『日身連』(毎月8千部発行)については、日身連が関わる国等における障害関連の動きを分かりやすく提供することに心がけるとともに、加盟団体の活動(障害者週間の行事紹介やその他関連記事)を紹介するなど全国的な活動の情報提供ができるように紙面の充実を図り、賛助会員の入会促進に努めた。   10. その他の関連事業 (1) ジパング倶楽部特別会員の取扱事業 加盟団体の協力を受け、JRジパング倶楽部特別会員の新規及び更新等の受付業務(年間取扱15,849件)を行った。また、会員からの苦情や問い合わせに対しては、JR東日本ジパング倶楽部事務局と連携協力して適切な対応に努めた。 (2) 日本障害フォーラム((JDF・代表:阿部一彦)関連事業 JDFの活動に連携協力し、旧優生保護法の問題等含めて、国内外の障害者関連の諸課題に関しJDFの中核的存在の役割を務めた。また、障害者権利条約に関する国連障害者権利委員会へのパラレルレポートの準備・作成やJDFフォーラム及び集会等の企画、準備等についても連携協力し取り組んだ。 (3) 全国社会福祉協議会障害関係団体連絡協議会(会長:阿部一彦)関連事業 同協議会の会長として、障害分野に関するさまざまな課題や検討事項等に関し、構成団体が連携し取り組めるよう、協議会の取りまとめ役として協議会の発展にむけ取り組んだ。