令和3(2021)年度 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 事業報告 令和3年度は、障害者差別解消法改正法の成立や改正バリアフリー法の施行等、障害者施策にとり大きな進展の年となった。 日本身体障害者団体連合会(以下、「日身連」という。)は、障害関連の動きに注視し、府省庁や与党の会議等のメンバーとして参画するとともに、ヒアリング要請においては、会長および日身連組織体制強化及び障害者施策等に関する検討委員会(以下、「組織・施策等検討委員会」という。)を中心に対応に努めた。 また、バリアフリー関連の整備が加速するなかにおいて、加盟団体と協力連携して、障害当事者の視点からバリアフリー整備の進展に向け意見具申に努めた。 新型コロナウイルス感染症や大規模災害関連の対策については、個人の尊厳と生命の安全の上に障害特性に配慮したサポート体制や情報保障が確保されるよう要望するとともに、コロナ禍で困窮している団体運営や活動の課題改善への働きかけに努めた。さらに、感染症予防対策関連の情報については、機関紙やホームページを通し、遅滞ないよう加盟団体への提供共有に努めた。  障害理解の啓発促進については、日身連においても重要な活動の一つに位置づけてきているが、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に高まった社会の関心を好機として一層の理解啓発に向けて、障害分野以外にも交流等を行う等、多方面に目を向け取り組んだ。 日身連の財政及び組織体制の懸案事項については、最重要課題として財政の安定化に対する検討委員会(以下、「財政検討委員会」という。)並びに組織・施策等検討委員会を中心に課題改善に向け取り組んだ。そのほか、日身連の事業運営においては、計画した行事や会議が円滑に実施できるよう、オンラインの活用や企画内容の工夫等に努め遂行した。 日身連の主な事業: 1. 第66回日本身体障害者福祉大会 〜コロナ禍を越え、強い絆で〜 本大会については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、当初予定していた福岡県での開催が来年度に延期となったことから、日身連本部が主催となり運営にあたった。万全な感染症予防対策に心掛け、ライブ配信(会長および副会長は地元からオンライン参加)による大会開催として、6月28日(月)、2部構成で行った。 第1部は、事前収録した村木厚子氏(内閣官房政策参与、津田塾大学客員教授、元厚生労働省事務次官)による講演「生きやすい地域社会を創る〜障害者団体に期待すること〜」と、阿部一彦日身連会長とのショート対談を行った。 第2部は、式典と議事を行い、日身連会長被表彰者48人の方を写真とともに紹介したほか、約半世紀にわたりご寄付いただき、この度廃業される日身連協力会に感謝状を贈呈した。議事では、大会決議、大会宣言のほか、令和2年度事業報告及び令和3年度事業計画の報告が行われた。 2. 国及び政党等に対する要請行動並びに審議会等への積極的参画 (1)内閣府障害者政策委員会や厚生労働省社会保障審議会障害者部会、労働政策審議会障害者雇用分科会はじめ、内閣官房、内閣府、厚生労働省、国土交通省、文部科学省、総務省、経済産業省、金融庁、警察庁等の委員会や検討会等のほか与党のヒアリングや委員会に出席し、意見具申に努めた。 (2)事業者による合理的配慮の提供の義務化等の改正が行われた障害者差別解消法については、改正法により基本方針が改定されることから、内閣府障害者政策委員会において行われた団体ヒアリングに参加し、意見要望を行った。 (3)新型コロナウイルス感染症に関する意見交換会やヒアリングにも積極的に参加し、障害特性に配慮した接遇やコミュニケーションのあり方、感染予防対策に関するハード面ソフト面での対応等について必要な対策が講じられるよう求めた。 (4)国や民間企業等からの協力要請に関しても積極的に対応し、バリアフリー環境の整備や障害理解に係る啓発・促進が図られるよう働きかけに努めた。 ・アンケート:公共交通機関の新たな日常を踏まえた接遇に関する調査、接遇研修プログラム改定に向けた調査、車椅子使用者等駐車施設の利用調査、熱中症対策等に関する調査、読書及び情報行動に関する調査、コロナ禍での新しい生活様式に関する不便さ・ニーズ等調査、防災関連委員会への参画状況調査、補装具支給制度等における適切なフォローアップ等のための調査 ・ヒアリング:障害者差別解消法改正に伴う基本方針に関すること、障害者総合支援法施行後3年の見直しに関すること、歩行者移動支援サービスの整備仕様調査、都市公園の移動円滑整備ガイドラインの改訂に向けた検討、旅館業法の見直しに関すること、障害者のスポーツ無実施に関する調査研究 ・実証実験:自動運転バス定着モニター調査 ・意見交換:金融機関のバリアフリー整備状況 (5)令和4年度予算税制等に関する要望や障害福祉サービス等に関する報酬改定に対し、与党へ要望を行った。心身障害者用低料第三種郵便物制度の要件問題については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け協議が滞ってしまったが、JDF及び障害者団体定期刊行物協会を中心に、来年度以降も課題解決に向けて取り組んでいく。 (6)日身連及び加盟団体の活動や障害者関連施策の情報が遅滞なく把握できるように、日身連ホームページ(加盟団体会員専用サイト)や機関紙『日身連』、メールを活用し情報提供に努めた。 (7)国への『日身連要望事項』については、理事会の審議を経て、正副会長会及び組織・施策等検討委員会において要望事項の取りまとめを行い、関係省庁から回答文書を求め提出した。 3. 新型コロナウイルス感染症対策及び災害時における対応について (1)新型コロナウイルス感染症の終息がみえないことから、大会や研修会等については、オンラインを活用して実施、あるいはやむを得ず中止とした。 @第66回日本身体障害者福祉大会 ライブ配信 Aブロックでの身体障害者相談員研修会は、2ブロック(九州/熊本県・会場併用、近畿/兵庫県)はオンライン配信、4ブロック(東北・北海道、関東甲信越静、中部、中・四国)は中止 B社会参加推進センター関係者及び障害者110番事業従事者等相談実務経験者等を対象に日身連トークセミナー「2020東京オリパラを終えて 障害理解促進への期待と展望」(登壇者/田口亜希氏、阿部一彦日身連会長)をオンライン配信 (2)理事会並びに評議員会については書面同意による決議の省略とオンラインによる開催を行った。 (3)新型コロナウイルス感染症対策に関連した要望を国や与党へ行ったほか、関係省庁からの意見交換等にも積極的に取り組んだ。 (4)そのほか、新型コロナウイルス感染症関連情報について、機関紙『日身連』やホームページあるいはメールを活用し、加盟団体への情報提供・共有に努めた。 (5)災害に関することとして、東日本大震災等過去の教訓をいかした対策(避難誘導、避難所、仮設住宅等に関わる課題や避難訓練の在り方)が推進されるよう、与党との意見交換の場で要望や提案に努めた。また、内閣府の防災推進国民会議 に参加(JDF代表の立場から)し提言に努めた。令和4年3月に発生した宮城・福島沖を震源とした地震については、地震発生地の加盟団体に被害状況等について確認を行った。 4. 中央障害者社会参加推進センター事業の充実 (1) 新型コロナウイルス感染症の終息がみえないことから6ブロックでの障害者相談員研修会並びに障害者110番事業研修会については、感染予防を第一に、以下のとおり実施または中止した。 @ブロックでの身体障害者相談員研修会 2ブロックはオンラインを活用し開催 ‐九州ブロック(令和3年12月2日、3日/熊本県) 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本県熊本市)で感染症対策を十分に講じて開催、後日オンデマンド配信。会場及び視聴参加者は延べ665人 第1日目 第1研究部会「障害者差別解消法および心のバリアフリーの理解と地域社会への啓発について」、第2研究部会「地域障がい者団体と相談員の活動活性化について」 第2日目 講演「ユニバーサルデザインのまちづくりと心のバリアフリー〜東京2020大会がもたらしたもの、そして強く前へ」 講師 橋儀平氏(東洋大学名誉教授) ‐近畿ブロック(令和3年12月3日〜9日/兵庫県) 事前収録した動画をYouTubeで限定配信、視聴者数は延べ560人 講演「障害者への新型コロナウイルス感染症にかかる対応、感染予防について」 講師 藤川雄一氏(厚生労働省障害福祉課相談支援専門官) 4ブロック(東北・北海道、関東甲信越静、中部、中・四国)は中止 A日身連トークセミナー「2020東京オリパラを終えて 障害理解促進への期待と展望」(令和4年3月15日〜3月31日・限定配信) 講師/田口亜希氏(元射撃パラアスリート、日本パラリンピック協会理事) 進行/阿部一彦日身連会長 社会参加推進センター関係者や障害者110番事業従事者等相談実務経験者等を対象にオンライン配信 (2)令和4年3月25日(金)、中央障害者団体及び学識経験者等で構成される中央障害者社会参加推進協議会(14団体)及び中央障害者社会参加推進協議会部会(11団体)合同委員会をオンラインで開催し、厚生労働省障害保健福祉部企画課自立支援振興室の小林靖室長補佐に出席いただいた。会議では、事業変更に伴う予算執行の内容確認や令和4年度事業計画案を協議したほか、各団体における障害者の社会参加に資する取組状況等について活発に意見交換を行った。 5. 障害者相談支援事業の充実 (1)令和4年2月22日(火)、身体障害者相談員全国連絡協議会理事会をオンラインで開催し、令和3年度事業報告案及び決算見込、令和4年度事業計画案及び予算案について審議したほか、コロナ禍での研修事業運営や地域の取組等について意見交換を行うともに、障害者相談活動の課題について議論を行った。 (2)身体障害者相談員全国連絡協議会会員に向け『相談員会報』(令和3年度版、第23号8,000部、年1回)を発行し、協議会理事会の報告のほか、障害者関連施策の動向や日身連の活動等の情報提供に努めた。また、新型コロナウイルス感染症の予防対策や国等からの通知や相談活動に活用できる情報の提供にも努めた。 (3)令和2年度出版した『障害者相談員のための活動ハンドブック』が広く活用されるように機関紙やホームページ等を介し、周知広報に努めた。 6. 障害及び障害者理解の啓発促進 (1)新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、障害者権利条約の国別審査が滞るなか、パラレルレポートに関する理解認識を図るため、JDFと連携し報告会の開催に向け取り組んだ。 (2)改正障害者差別解消法の理解促進に向け、心のバリアフリーに対する理解啓発が地域へさらに拡がるよう、情報発信と情報共有に努めた。加えて、企業からの協力依頼に応える等、加盟団体の協力を得ながら多方面にわたり取り組んだ。 (3)民間団体や事業者からの協力依頼についても積極的に取り組んだ @空港施設内等を会場に開催したインクルージョンフェスティバルの実施に向け協力した。(全国23空港) A NTTデータや野村総合研究所等から障害のある人の交通移動環境や生活環境、補装具等に関する調査やヒアリングに協力するとともに、障害理解の啓発に努めた。 7. 消費生活協同組合社会福祉活動等助成事業 「身体障害者団体の動向等に関する理解啓発事業」として、障害者を取り巻く制度や環境の課題や障害者施策の変遷等を情報発信してきた機関紙『日身連』が蓄積してきた有益な資料の活用として縮刷版を編纂し、行政機関、障害者関係団体、図書館等に300セット無償配布した。 8. 日身連の基盤強化等 最重要課題の財政の安定化と組織体制強化に関しては、2つの検討委員会/財政検討委員会、組織・施策等検討委員会を中心に協議を行い取り組んだ。 (1)財政基盤の強化/財政検討委員会(オンライン開催3回) 予算編成に係る協議を行うとともに、日身連の財政問題として支出削減の方策や機関紙の協賛広告の収入増に向けた対策等について協議を重ね、課題改善に向けて取り組んだ。 (2)政策体制の強化/組織・施策等検討委員会(オンライン開催2回) 障害者差別解消法の改正に伴う基本方針の見直しに関することやコロナ禍における接遇対策や旅館業法の見直し等のヒアリングや意見交換の対応に向け協議を行う等、障害関連施策の動向に注視して取り組んだ。また、令和4年度日身連要望事項の取りまとめを行う等、委員会の役割に努めた。 (3)新型コロナウイルス感染症に関する会議運営の対応 評議員会、理事会、正副会長会及び検討委員会等のほか、大会や研修会の開催方法についてオンラインを活用して開催する等、感染予防を第一に取り組んだ。また、オンライン開催の実施にあたっては、参加者の通信環境や情報保障等にも配慮し取り組んだ。 9. ホームページ及び機関紙の充実 ホームページ及び機関紙『日身連』(毎月7,500部発行)を活用し、日身連の事業や出版等の活動はじめ、国等の障害者関連の施策の動向、新型コロナウイルス感染症の関連情報等について、遅滞がないよう情報の発信に努めた。そのほか、加盟団体の事業活動(障害者週間の行事やその他関連記事)等含め、日身連及び加盟団体の社会貢献に係る活動等の周知等、紙面の充実を図り、新規読者や賛助会員等の獲得に努めた。ホームページについては、日身連の活動はもとより、障害分野の動向や社会の動きを遅滞なく情報提供することに努めた。また、加盟団体の活動の紹介等にも取り組み、閲覧者の獲得に向けて取り組んだ。会員専用ページについては、遅滞なく、国の最新情報や障害分野の関心の高い事項の情報提供に努めた。 10. その他の関連事業 (1)ジパング倶楽部特別会員の取扱事業 加盟団体の協力を得て、JRジパング倶楽部特別会員の新規及び更新の受付業務を行うとともに、円滑に利用できるように会員からの問い合わせ等に対して、JR東日本ジパング倶楽部事務局への連絡調整を行う等、適切な運用に努めた。 (2)日本障害フォーラム(JDF・代表:阿部一彦)関連事業 JDFの活動に連携協力し、国内外の障害者関連の諸課題に取り組むとともに、JDF代表として国の会議に参画し意見具申に努めた。延期になっている障害者権利条約の国別審査に向けて、パラレルレポートに関する勉強会や報告会の開催に協力し、JDFの中核的存在としての責務を果たした。 (3)全国社会福祉協議会障害関係団体連絡協議会(会長:阿部一彦)関連事業 障害分野に関するさまざまな課題や検討事項等に関し、構成団体が連携して取り組めるよう、協議会の取りまとめ役として会の発展に努めた。