令和4(2022)年度 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 事業報告  令和4年度は、8月に実施された国連障害者権利委員会の対日審査を踏まえた総括所見に関し、その実現にむけた取り組みに踏み出す年となった。  日本身体障害者団体連合会(以下、「日身連」という。)は、障害関連の動きに注視し、内閣府障害者政策委員会や厚生労働省社会保障審議会障害者部会をはじめ、関係府省庁の検討会に参画したほか、国や民間事業者とのヒアリングにも積極的に参加し、意見具申に努めた。また、バリアフリー環境の整備についても、加盟団体の方々と協力連携して取り組んだ。  身体障害者相談員の現状把握に関しては、身体障害者相談員に関する調査を実施し、報告書を取りまとめ配布した。  また、地方障害者社会参加推進センター並びに障害者社会参加推進実施団体を対象に6ブロックで連絡会議を開催し、相互のネットワークの構築を図った。  新型コロナウイルス感染症や大規模災害関連の対策については、障害特性に配慮したサポート体制や情報保障が確保されるよう要望するとともに、コロナ禍で困窮している団体運営や活動の課題改善への働きかけに努めた。  また、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に高まった障害理解への関心が地域社会をはじめ様々な分野に広まるよう、障害理解の啓発促進に努めた。  日身連の財政及び組織体制の懸案事項については、最重要課題として財政の安定化に対する検討委員会並びに組織体制強化及び施策等に関する検討委員会を中心に課題改善に向け取り組んだ。  そのほか、コロナ禍での事業運営となったが、計画通りに実施できるよう、オンラインを活用するなど工夫し、円滑な実施に努めた。   日身連の主な事業: 1. 第67回日本身体障害者福祉大会ふくおか大会  新型コロナウイルス感染症の感染予防を第一に、6月20日、オンラインによる録画配信にて開催した。第1部では、東京オリンピック・パラリンピック推進本部や復興庁等で要職を務めた御手洗潤氏(東北大学公共政策大学院教授)から「パラリンピックのレガシーを活用した共生社会の実現に向けて」と題し、講演いただいた。第2部では、式典と議事を行い、日身連会長被表彰者50名の方を写真とともに紹介した。議事では、大会決議、大会宣言のほか、令和3年度事業報告及び令和4年度事業計画の報告が行われた。   2.国及び政党等に対する要請行動並びに審議会等への積極的参画 (1)内閣府障害者政策委員会や厚生労働省社会保障審議会障害者部会、労働政策審議会障害者雇用分科会をはじめ、内閣府、厚生労働省、国土交通省、文部科学省、経済産業省、金融庁等の委員会や検討会等のほか、政党や事業者のヒアリング等に参加し、意見具申に努めた。 (2)国への「日身連要望事項」については、長年にわたり要望してきた有料道路の対象車両の要件緩和に関して、全国脊髄損傷者連合会等と連携し与党や国土交通省へ働きかけ、その実現をみた。その他要望事項についても地域からの声として関係省庁へ文書回答を求め提出し、回答は冊子に取りまとめ加盟団体へ配布する。 (3)障害者権利条約を踏まえた障害者施策の促進と障害当事者参画が地域においても着実に実行されるよう、国や政党等への提言に努めた。 (4)国や民間企業等からのヒアリング要請等に関し、積極的に対応し、環境整備や障害理解に係る啓発・促進が図られるよう努めた。 ・アンケート:当事者目線に立ったバリアフリー環境の課題等の把握に向けたアンケート(国土交通省)、災害時における駅や列車からの避難に関するアンケート(国土交通省)、障害のある方の金融機関利用におけるサービスや環境整備に関するアンケート(金融庁) ・ヒアリング等:障害を理由とする差別等に関する調査事業にかかるヒアリング(NTTデータ経営研究所)、マンションのバリアフリーに関するヒアリング(マンション学会)、民間賃貸住宅のバリアフリーに関するヒアリング(国土交通省)、当事者目線にたった評価指標策定のためのプレ調査意見交換会(国土交通省)、障害者手帳表示に関する意見交換(厚生労働省)、障害者団体バリアフリー環境に関する意見交換(スマートインクルージョン推進機構、三菱地所)、旅館業法改正案に関する説明(厚生労働省)、卓越した技能者表彰(現代の名工)における障害者部門新設に関する説明(厚生労働省)、障害者の就労・サービス利用等に関する意見交換(リクルート)、障害者の金融サービスの利便性向上に向けた取組状況に関する意見交換会(金融庁) (5)令和5年度予算税制や障害福祉サービス等に関し、与党へ要望を行った。心身障害者用低料第三種郵便物制度の要件問題については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け協議が滞っているが、日本障害フォーラム(JDF)及び障害者団体定期刊行物協会と連携し、課題解決に向けて取り組んでいく。 (6)日身連及び加盟団体の活動や障害者関連施策の情報が遅滞なく把握できるように、日身連ホームページ(加盟団体会員専用サイト)や機関紙『日身連』、メールを活用し情報提供に努めた。 3.新型コロナウイルス感染症対策及び災害時における対応について (1)新型コロナウイルス感染症の収束がみえないことから、全国大会や研修会等については、オンラインを活用する等、実施に努めた。 @第67回日本身体障害者福祉大会ふくおか大会については、オンラインにて開催。 Aブロックにおける身体障害者相談員研修会については、5ブロック(東北・北海道/宮城県仙台市、近畿/滋賀県、中・四国/広島県は会場、関東甲信越静/埼玉県はオンライン)で開催され、中部ブロックは中止とした。 B障害者の権利擁護を目的に、障害者110番事業従事者等相談実務経験者等を対象に、7月27日〜8月15日の期間、障害者110番研修会をオンライン開催した。 (2)理事会並びに評議員会についてはオンラインにより開催した。 (3)新型コロナウイルス感染症対策に関連した要望を国や与党へ行った。 (4)災害に関することとして、東日本大震災等過去の教訓をいかした対策(避難誘 導、避難所、仮設住宅等に関わる課題や避難訓練の在り方)が推進されるよう、与党との意見交換の場で要望や提案に努めた。また、内閣府の防災推進国民会議に参加(JDF代表の立場から)し提言に努めた。 4.中央障害者社会参加推進センター事業の充実 (1)共生社会に向けた障害理解の促進を目的に政策協議事業として、加盟団体関係者、都道府県障害者社会参加推進センター運営団体及び障害関係団体関係者、障害当事者等を対象に、講演研修を行った。   @令和4年6月20日(オンライン配信)    講演「パラリンピックのレガシーを活用した共生社会の実現に向けて」    講師 御手洗潤氏(東北大学公共政策大学院教授) (2)障害者の権利擁護を目的に、障害者110番事業従事者等相談実務経験者等を対象に、障害者110番研修会をオンライン配信で行った。講演においては、参加者から事前に障害者虐待防止に関する質問を募り、講師から回答を行う等、プログラムを工夫し実施した。   @令和4年7月27日〜8月15日(オンライン配信)/視聴カウント233回線)    講演1「障害者虐待の実態と防止にむけた取組等について」     講師 松崎貴之氏(厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課虐待防止専門官)    講演2「障害者虐待防止法の現状と課題、さらなる取組への期待について」     講師 辻川圭乃氏(弁護士) (3)令和5年3月16日、中央障害者団体及び学識経験者等で構成される中央障害者社会参加推進協議会(14団体)及び中央障害者社会参加推進協議会部会(11団体)合同委員会をオンラインで開催し、厚生労働省障害保健福祉部企画課自立支援振興室の照井直樹室長補佐に出席いただいた。会議では、令和4年度における中央障害者社会参加推進センター事業の運営状況の報告や令和5年度事業計画案を協議したほか、各団体における障害者の社会参加に資する取組状況等について意見交換を行った。 (4)新型コロナウイルス感染症の影響により、6ブロックでの障害者相談員研修会については感染予防を第一に、以下の通り、実施(1ブロック中止)した。   @ 会場開催 4ブロック 〇東北・北海道ブロック 令和4年11月10日(参加82名)   TKPガーデンシティ仙台・TKPガーデンシティPREMIUM仙台西口(宮城県仙台市)  ・基調講演1「障害福祉施策について」   講師 奥出吉規氏(厚生労働省障害保健福祉部企画課自立支援振興室室長)  ・基調講演2「障害者施策の動向を踏まえて〜ピアサポート活動への期待〜」   講師 阿部一彦氏(仙台市障害者福祉協会会長(日身連会長))  ・障害者相談員の活動状況をテーマとする発表及び意見交換  〇近畿ブロック 令和4年11月10日(参加431人)  滋賀県立文化産業交流会館イベントホール(滋賀県米原市)  ・講演「今後の障害者福祉施策の動向について」 講師 藤川雄一氏(厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援推進室相談支援専門官) 〇中国・四国ブロック 令和4年10月4日(参加132人)  グランドプリンスホテル広島(広島県広島市)  ・講演「挑戦!自分の障害を力に!」 講師 白砂匠庸氏(東京パラリンピックやり投げ選手)  ・講演「コミック『ヤンキー君と白杖ガール』学校寄贈の取組から出前授業へ」   講師 森信志津男氏(三次市身体障害者協会副会長) 〇九州ブロック 令和4年11月18日(参加329人)   鹿児島サンロイヤルホテル(鹿児島県)  ・講演「障害者施策の動向と障害者相談員活動の役割」   講師 阿部一彦氏(日身連会長)  ・シンポジウム「災害時の障害者の安全と身体障害者相談員の役割」   A オンライン開催 1ブロック 〇関東甲信越静ブロック 令和4年11月11日〜12月10日(参加418人)  オンライン配信(埼玉県) ・講演「障害者差別解消法でインクルーシブな社会へ」  講師 佐藤聡氏(DPI日本会議事務局長) (5)都道府県障害者社会参加推進センター及び障害者社会参加推進事業実施団体を対象に、6ブロックごとの連絡会議を開催し、各地域における障害者社会参加推進事業の取組状況の情報共有・交換を行った。 ブロック 第1回(参加団体) 第2回(参加団体) 東北・北海道 令和4年11月7日(7団体) 令和5年2月9日(8団体) 関東甲信越静 令和4年11月9日(10団体) 令和5年2月8日(9団体) 中部 令和4年11月15日(7団体) 令和5年2月15日(7団体) 近畿 令和4年11月8日(9団体) 令和5年2月9日(9団体) 中・四国 令和4年11月9日(9団体) 令和5年2月6日(10団体) 九州・沖縄 令和4年10月28日(7団体) 令和5年2月10日(10団体) 5.障害者相談員活動の充実 (1)身体障害者相談員の減少や高齢化、地域格差による相談活動の課題等の把握のため、加盟団体からの要望を受け、身体障害者相談員協議会または加盟団体を対象に、インターネットによる調査を実施した。取りまとめた調査結果については、身体障害者相談員全国連絡協議会理事会へ報告するとともに、加盟団体へ報告書(墨字及びテキストデータ)を配布した。 (2)令和5年2月13日、令和4年度身体障害者相談員全国連絡協議会理事会をオンラインにて開催し、令和4年度決算見込み関係及び令和5年度予算案の協議を行った。また、身体障害者相談員に関する調査結果の報告を行うとともに、協議会における事業運営に関する課題検討、コロナ禍での研修事業運営や地域の取組等について意見交換を行い、協議会相互の連携強化に努めた。 (3)身体障害者相談員全国連絡協議会会員に向け『相談員会報』(令和4年度版、第24号8,000部、年1回)を発行し、協議会理事会の報告のほか、障害者関連施策の動向や日身連の活動等の情報提供に努めた。また、令和4年度における障害者施策に関することや障害者権利条約に関する動きのほか、相談活動に役立つ情報の提供にも努めた。 (4)令和2年度出版した『障害者相談員のための活動ハンドブック』が広く活用されるように機関紙やホームページ等を介し、周知広報に努めた。 6.障害及び障害者理解の啓発促進 (1)障害者権利条約の対日審査の様子や障害者権利委員会から日本政府へ懸念事項と勧告からなる総括所見が出されたことから、総括所見の報告とともに、障害理解の促進に向け、JDFと連携協力し取り組んだ。 (2)改正障害者差別解消法の理解促進とともに、心のバリアフリーへの啓発促進のため、民間団体や企業からのヒアリング協力等、多方面にわたり取り組んだ。加盟団体にむけた国等の情報共有に努め、地域へ障害理解がさらに拡がるよう加盟団体等と連携協力し情報共有に努めた。加えて、企業からの協力依頼に応える等、加盟団体の協力を得て、多方面にわたり取り組んだ。 (3)民間団体や事業者からの協力依頼についても積極的に取り組んだ。 @ 空港施設内等を会場に開催したインクルージョンフェスティバルの実施に向 け協力した。(全国31空港他) A NTTデータ経営研究所や三菱地所、リクルート等の依頼により障害者差別に関する調査やバリアフリー環境整備に関するヒアリングに協力するとともに、障害理解の一層の啓発に努めた。 7.障害者の社会参加促進に向けた障害者団体の活動調査事業(消費生活協同組合社会福祉活動等助成事業)  日身連のネットワークを活用し、都道府県政令市加盟団体を対象に、障害者の社会参加を目的とする事業について調査を行い、結果を取りまとめた。なお、報告書の作成及び無償配布、ホームページを活用した参考事例の情報発信については令和5年度中の完了とする。 8.日身連の基盤強化等  最重要課題の財政の安定化と組織体制強化に関しては、2つの検討委員会(財政検討委員会、組織・施策等検討委員会)を中心に協議を行い取り組んだ。 (1)財政基盤の強化/財政検討委員会(オンライン開催4回)  日身連の財政問題として機関紙の協賛広告等の収入源確保に向けた対策等について協議を重ね、課題改善に向けて取り組んだ。 (2)政策体制の強化/組織・施策等検討委員会(オンライン開催2回)  副会長の定数に関することや作業部会の運営要綱案等を協議検討したほか、国や民間企業等とのヒアリングや意見交換等、障害理解の促進に努めた。 (3)新型コロナウイルス感染症に関する会議運営の対応  評議員会、理事会、正副会長会及び検討委員会等のほか、大会や研修会の開催については、オンラインを活用して開催する等、感染予防を第一に取り組んだ。また、オンライン開催の実施にあたっては、参加者の通信環境や情報保障等にも配慮し、支障が生じないよう取組に努めた。 9.ホームページ及び機関紙の充実  機関紙『日身連』(毎月7,200部発行)を活用し、日身連の事業や出版等の活動はじめ、国等の障害者関連の施策の動向、新型コロナウイルス感染症の関連情報等について、遅滞がないよう情報の発信に努めた。そのほか、加盟団体の事業活動(障害者週間の行事やその他関連記事)等含め、日身連の活動を広く周知していくとともに、加盟団体の社会貢献に係る活動等の周知等、紙面の充実を図り、新規購読者や賛助会員等の獲得に努めた。ホームページについては、日身連の活動を広く周知するとともに、障害分野の動向や社会の動きを遅滞なく情報提供することに努めた。また、加盟団体の活動の紹介等にも取り組み、閲覧者の獲得に向けて取り組んだ。   10.その他の関連事業 (1)ジパング倶楽部特別会員の取扱事業  加盟団体の協力を得て、JRジパング倶楽部特別会員の新規及び更新の受付業務を行うとともに、円滑に利用できるように会員からの問い合わせ等に対して、JR東日本ジパング倶楽部事務局への連絡調整を行う等、適切な運用に努めた。 (2)日本障害フォーラム(JDF)(代表:阿部一彦日身連会長)関連事業  JDFの活動に連携協力し、国内外の障害者関連の諸課題に取り組むとともに、JDF代表として国の会議に参画し意見具申に努める等、JDFの中核的存在としての責務に努めた。また、令和4年8月に行われた日本政府に対する障害者権利委員会の国別審査を見届けるため、阿部一彦日身連会長がJDF代表としてスイスジュネーブへ渡欧し、権利委員や諸外国の障害者団体等と意見交流を図った。 (3)全国社会福祉協議会障害関係団体連絡協議会(会長:阿部一彦日身連会長)関連事業 障害分野に関するさまざまな課題や検討事項等に関し、構成団体が連携して取り組めるよう、協議会の取りまとめ役として会の発展に努めた。 ※以上、報告資料2-1 令和4年度事業報告終わり。