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支援費制度「上限設定」にかかるこれまでの
経過
2003/02/14


支援費制度「上限設定」にかかるこれまでの経過を報告いたします。



1月10日
  行政が決めていた障害者福祉サービスを4月から障害者自身が選べるように改める「支援費制度」について、厚生労働省が身体・知的障害者が受けるホームヘルプサービスの時間数などに「上限」を設ける検討を始めていることが報道される。
  厚生労働省はこれまで地方自治体に対して上限を設けないよう指導してきた経緯があるうえ、日身連を含むすべての障害者団体、また、関係行政機関等に事前の連絡や相談も一切なく上限設定しようとしていたことに、波紋が広がった。




1月16日 11:00~14:30
 中央の各障害者団体では、全国各地で混乱が生じ動揺が広がっている状況を重く受け止め、日身連、全日本手をつなぐ育成会、日本障害者協議会、DPI日本会議などの主唱により、支援費制度でホームヘルプサービス派遣の上限を定めようと厚生労働省が検討していることに対する緊急抗議行動を実施し、厚生労働省との交渉に入る。

参加者

厚生労働省側 5名。
障害者団体
   日身連、全日ろうあ連盟、全日本手をつなぐ育成会、日本障害者協議会、DPI日本会議の各会代表ら計40名。

交渉の席において厚生労働省側は、
 ・上限設定はあくまで「公正・公平」な基準により市町村に補助金が渡るようにし、各市町村の格差をなくすために実施するものであり、個人のサービス量に上限を加えるものではない。
 ・在宅サービスは予算の範囲内(約280億円)で行う。
 ・支給決定自体は市町村の自治事務であり、厚生労働省側には制約する権利はない。
  という点を繰り返し述べるのに終始した。
 これに対し、障害者団体側からは
 ・厚生労働省はこれまで地方自治体に対して上限を設けないよう説明してきたにもかかわらず突如その説明を翻す方針を示した。「自己決定」という支援費制度の趣旨に反するもので承服できない。
 ・(上限設定は)事実上の利用基準につながる公算が高い。
 ・障害のある人々にとっては命に関わる問題であり、障害の多様性から見ても一律の基準を設けることはおかしい。
 ・障害者本人だけでなく、全国の各自治体でも混乱・動揺が広がっている。制度の根幹に関わるこうした重要事項を団体や地方自治体に対して相談や連絡がなく、一方的に断行しようとしたのはあまりに唐突。厚生労働省の責任は極めて重い。

 等の意見が出され、今回の方針の白紙撤回を求めるとともに、1月21日の都道府県主管部長会議および同月28日の都道府県主管課長会議の席で、補助金交付基準に関する国としての方針を示さないよう要望した。

  この要望に対し、厚生労働省側は「1月20日に障害保健福祉部長と団体との話し合いの場を設定する」と提案するに止どまる一方で、「国としての方針は示さなければいけない」と回答した。
団体側は「方針を示さないという確約が得られなければ、20日に話し合っても同じことの繰り返しになる」という見解で一致した。(最終的に障害保健福祉部長との話し合いは受諾せず、実施されないこととなった。)


 
1月16日 18:30
 交渉終了後も引き続き主唱団体の代表・担当の間で今後の対応について協議。
厚生労働省に対し、
1.今回の混乱のきっかけとなった「上限設定」については改めて白紙とし、現在のホームへルプサービスのシステムで、向こう1年間は実施する。その間に、状況把握のための実態調査を全国規模で実施する。
2.過半数以上が障害当事者(本人・家族等)で構成される検討委員会を速やかに設置する。
3.今回の混乱に対する見解も含め、厚生労働大臣から本件に関する正式な回答を求める。
の3項目について、団体側として建設的な提案を行った。
  また、このほか、21日の都道府県部長会議では補助金交付基準の方針を示さないよう改めて要請し、上記1.~3.の提案事項については、28日の都道府県課長会議までに文書での回答も求めた。



1月17日
 主唱団体連名の文書による要望書を厚生労働大臣に提出。なお、この要望書には上記の1.~3.の事項にあわせ、昨年12月20日、厚生労働省が平成15年度からの地方交付税措置(一般財源化)の方針を示した「市町村障害者生活支援事業」「障害児(者)地域療育等支援事業」の2事業の現行制度(国庫補助制度)の維持を求める事項も加えられた。
 「市町村障害者生活支援事業」「障害児(者)地域療育等支援事業」の一般財源化については、「障害者の地域での生活を支える重要な事業でありながら、団体や各地方自治体に対する一切の相談や連絡もなく決定された」として、全国各地の団体から不満や動揺の声があがり、また、日身連へも何らかの対策を講じるべきとの要望等が入っていた。




1月20日
 日身連は、理事会を開催し、次の行動指針を議決した。内容は以下のとおりである。

(1)支援費制度は、障害のある人々の自主的・主体的な地域生活の確立を支援するため、従来の「措置」に代わる、契約を前提にした新しい制度である。
現時点でサービスの供給体制や各自治体での施行体制の整備が不十分なところもあり、利用者となる障害者が安心して利用できる、障害種別のニーズの特性にも配慮した、一日も早い体制整備を国および関係機関に求めていくこととするほか、会員への情報提供の一層の充実に努める。
なお、昨今、厚生労働省が身体・知的障害者が受けるホームヘルプサービスの時間数などに「上限」を設ける方針を打ち出したことについては、利用者の主体性を最大限に尊重する制度という本制度の趣旨を覆しかねない問題である。
厚生労働省はこれまで「障害者に必要なサービスを提供する」との考えに基づき、時間数に上限を設けないよう地方自治体に指導してきた経緯もあり、制度導入目前という時期的な条件も重なり、各障害者団体のみならず地方自治体においても混乱が生じており、本方針の再考を働きかけていく。
  また、1月28日に厚生労働省主催の都道府県・指定都市・中核市障害福祉主管課長会議が開催される予定で、それまでには具体的な方針が示されることになっており、引き続き動向を注視する。

(2)地域の障害者の生活を支える、国の「市町村障害者生活支援事業」「障害児(者)地域療育等支援事業」についても、平成15年度から一般財源化される方針も先に示された。日身連としては、一般財源化により各自治体で当該事業の後退を招くことのないよう働きかけていく。



1月24日  10:00~12:00
 自民党組織本部において、「自民党内閣部会/障害者特別委員会合同会議」が開催された。この会議では、八代英太・障害者特別委員長の司会進行のもと、今回の「支援費制度・ホームヘルプサービス上限設定問題」に関して、まず障害者団体から認識・要望を述べ、厚生労働省の回答という形ですすめられた。
 厚生労働省の回答は従前の見解を繰り返すばかりで、進展は認められなかった。
団体側は、「厚生労働省はまず『基準ありき』で『障害者の現在の生活を守る』という視点が欠けている」と指摘。その上で、1.1年間の「試行期間」を設けて経過措置をとること、2.現在受けているサービスを保証すること、3.障害当事者を含めた「検討委員会」を設けてあるべき姿を模索すること、を要望。
これに対して厚生労働省は、1.あくまでも「補助金交付基準」は個々人の「上限」ではない、2.28日の課長会議で、個々のケースに応じたサービスを提供するように都道府県等の指導を徹底する、3.「検討委員会」の設置は前向きに考えたい、との意向を示した。
また、八代委員長が、「厚生労働省は、現在サービスを受けている障害者が不安にならないことを原則として、きちんと対応してほしい」と要請し、会議を終了した。



1月24日 11:30
 「自民党内閣部会/障害者特別委員会合同会議」会議終了後、本日締切の厚生労働大臣宛要望書の回答について、厚生労働省から説明があった。
 障害者団体が文書回答を求めたのに対し、大臣は口頭による回答を用意し、担当官が回答を読み上げた。
しかしながら、これは本日の会議前に作成されたもので、従来の見解のままである。また、文書回答を要請した団体側としては、到底受け入れることは出来ない。
このため、本日の会議で八代委員長が示した「現在サービスを受けている障害者が不安にならない収拾策を」という原則をふまえて、あらためて大臣の回答を要請した。
 厚生労働省は、これを持ち帰って大臣と検討し、本日中に回答をするとの約束をして、本日の協議を終了した。



1月24日 23:00
当連合会が他の3団体と共同で提出した要望書については、24日深夜、厚生労働大臣からの文書回答は出せないとの回答が厚生労働省側からあり、その代わり、当日昼の閣議後の会見で大臣が述べた内容を反映したメモが4団体に配付され説明を受けた。しかし、大臣の意向と厚生労働省担当者の説明に相違点があり、この点から、我々としては大臣の正式回答と受け止められないとの共通認識で、引き続き、改善を要求した。


 
1月27日 14:00
厚生労働省社会・援護局長らと4団体代表者との話し合いが行われ、厚生労働省側から別紙「今回の障害者ホームヘルプ事業国庫補助基準に関する考え方」が提示されました。
これらの内容について4団体で慎重に検討を行いました結果、我々の当初からの要求である、
1. 交付基準は個々人の支給量の上限を定めたものでないことを明記したこと、
2. 基準は現在の平均的な利用状況を踏まえて設定し、また今後、見直しを行うこと、
3. 原則として従前額を確保すること、
4. 当事者を含めた検討会を設置すること、
等が反映されたことが確認できたので、これを受け入れることとし、合意に至った。



今般の問題については、関係各方面から、多くの憂慮の声が寄せられておりましたが、我々の要求がほぼ叶えられた形で決着することができましたことをここにご報告申し上げます。


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