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ホームヘルプ予算今年度2割強不足する見通し
~第11回地域生活支援検討会おこなわれる
2003/11/18
  11月14日開かれた第11回障害者(児)の生活支援の在り方に関する検討会は、2日前に行われた7団体と厚生労働省との経過もあり、緊張に包まれた雰囲気の中で始まった。

冒頭高原障害福祉課長は今年度のホームヘルプ予算の執行状況について説明し、「支援費の4月と5月の利用実績から考えて、今年度のホームヘルプにかかる国の経費は、330億円が必要になる」と述べ、「今年度のホームヘルプ予算が11か月ベースで、278億円であることから、大幅に不足となる」見通しを明らかにした。

さらに、同課長はその理由について「支援費制度に移行し、総費用、総利用に関する、一時間当たり費用ともに、措置時代より伸びをみせる。昨年度と今年度を比較して総費用の伸び率(今年度については4月分)は34.6%となる。総利用時間数についても7%の伸びとなった」ことをあげた。

これを受けて、検討委員会に参加している障害7団体は共同で要望書(別記参照)を提出、日身連の森祐司委員が読み上げた。

 塩田障害保健福祉部長はこれに答え、「サービスの利用が増えたこと自体、支援費制度の影響によるものとしてとらえていきたい。今朝、厚生労働大臣も記者会見の中で、『支援費制度が全国津々浦々に行き渡っている状況と認識している』と述べている。要望書をふまえ精一杯の努力をして行きたい」と回答した。
 
 この日は、全国知事会として浅野宮城県知事からのヒアリングもあった。浅野知事は「初年度からこういうことになったことは憂慮すべき事態である。今後施設から居宅支援へ財源配分の変更をおこなう必要がある。市町村障害者生活支援事業等の一般財源化については、基本的には一般財源化は反対ではないが、これについては事業が浸透しないうちの一般財源化などで問題は大きい。今後ホームヘルプサービスについては、財源確保の観点から、介護保険に巻き込んでいく必要があるのではないか」等々と発言した。

 これに対して、大濱委員やピープルファーストの佐々木さんから、障害者のホームヘルプを介護保険に統合していくことに疑問の意見がだされ、特に大濱委員は「障害者の介護と高齢者の介護は基本的にちがうのではないか」とただした。

 浅野知事は「それは正論かもしれないが、現実問題として財源を確保していかなければならず、国民連帯の観点からも統合の必要性を現時点では感じている」と答えた。
 
 相談事業やケアマネジメントのありかたについても、この日は自由討議が行われた。

 中西委員は「セルフケアマネジメントが必要であり、障害者が障害のある仲間のエンパワメントを受けることにより、自らの生活を築いていくことが重要である。ケアマネジメントは時間的にも限定していく必要がある。障害者の生活のありようと高齢者のそれとは必然的に違いがあり、今のケアマネジメント手法で障害者のケアマネジメントをおしはめていくことは問題」と主張した。

 これに対して、複数の委員から「ケアマネジメント手法を取り入れていくことは重要。現在の介護保険のケアマネジメントは本来のケアマネジメントとはちがう。障害者や高齢者のもつニーズに対してマネジメントしていくことは求められている」などの意見も多く出された。

 太田(委員)は「福祉は利用したい人、あるいは利用の必要性のあるものが利用するもの。決して押し付けられるものであってはならない。専門家の人材育成は必要だと思うが、当事者や、当事者組織との共同によって、専門家支配の弊害を防ぐ策が必要」と発表した。

 この他、「利用者本位の視点」や「中立性の確保」等々議論は多岐にわたった。
 
ホームヘルプサービス問題は、私たちが1月に懸念していた問題が顕在化し、重要な曲がり角にさしかかっている。これからの取り組みが重要である。次回検討会は11月26日(水)14:00~17:00、厚生労働省18階専用第22会議室にて。(11月14日発行・障害連FAXレターNo.60(編集人・太田修平氏 = 中央障害者社会参加推進協議会委員)転載)


別 記
2003年11月14日
 
厚生労働大臣 坂口 力 殿
 
ホームヘルプサービスの国庫補助に関する緊急要望書
拝啓
 平素より、貴殿の障害者福祉へのご尽力に感謝申し上げます。
私たちは、ホームヘルプサービスを利用し地域で生活する重度障害者及び家族を会員に持ち、また、その生活を支援する団体です。
本年から障害者福祉の分野では支援費制度が導入され、措置制度から利用契約に基づく福祉サービスに大きく変わりました。「自己決定」「自己選択」の支援費制度の理念のもと、サービスの利用者である障害者の主体性が高まるとともに選択の幅が広がり、特にホームヘルプサービスを始めとする地域生活支援のサービスが拡充されました。また、既存のサービスの充実だけでなく、今まで必要であるにもかかわらずサービスを受けられていなかった多くの障害者が支援費制度によってサービスを受けられるようになりました。とりわけ、これまでホームヘルプサービスの利用ができなかった知的障害者においては、全国でサービス利用が活発に進んでいます。また、市町村が支援費制度発足にあたって、財政が厳しい中にもかかわらず支援費制度の予算を拡充させたことも大きな要因です。支援費制度がもたらしたこのような状況については、私たちは大きく評価しているところです。
しかしながら、支援費制度によって各地域のサービス量が増加したことで、本年度の国庫補助金が大幅に不足する可能性が強まっています。厚労省は現在、自治体に対して調査を行っていますが、すでに都道府県、政令指定都市から自治体のサービス量に応じた補助金の確保を要望する声があがっています。  
市町村は国庫補助が受けられることを前提に予算を組んでおり、国庫補助が受けられないということであれば、今年度末にサービスの縮小を行わざるをえない市町村が出てくることは確実です。このような情報に接し、今後、必要な介護を受けられなくなるのではないかという不安の声が多くの障害者から寄せられています
また、支援費制度発足の年においてすでに財源的にたちゆかなくなることは、制度の存続にもかかわることであり、支援費制度が始まりようやくこれから地域生活への展望を持ち始めた多くの障害者の期待を裏切るものです。
本年度の予想を上回るサービス量の拡大は、支援費の制度の理念に沿って各自治体が障害者施策に懸命に取り組み、潜在的なニーズが掘り起こされた結果であり、まさに支援費制度導入によって意図した状況が起こったといえます。これに対して国がしっかりと財源保障をし、市町村をさらに支援する体制をとるならば、今後の障害者の地域生活支援はよりいっそう進み、支援費制度は世界に誇れる障害者福祉制度となるでしょう。
私たちはこのように考え、本年度のホームヘルプサービスについて必要な予算の増額を行っていただけるよう国に強く要望致します。
 
社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 会長 兒玉 明
日本障害者協議会 代表 河端 静子
特定非営利活動法人 DPI日本会議 議長 山田 昭義
社会福祉法人 日本盲人会連合 会長 笹川 吉彦
財団法人 全日本聾唖連盟 理事長 安藤 豊喜
社団法人 全国脊髄損傷者連合会 理事長 妻屋 明
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会 理事長 藤原 治

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