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4.30公開対話集会行われる
 ~一般財源化をどうとらえるか、600名がかたずを飲む
2004/05/07
  会場は超満員に膨れ上がった。事前に参加希望の受付をしたが、多くの人たちを断らざるを得なかった。それでも別室の100名を含めて600名の参加者が全国から集まった。
 4月30日(金)、中野サンプラザで「“介護保険”と“障害保健福祉施策”の関係を考える4.30公開対話集会」がまる一日行われた。主催は、実行委員会形式で、日本身体障害者団体連合会、日本障害者協議会(JD)、DPI日本会議、日本盲人会連合、全日本ろうあ連盟、全国脊髄損傷者連合会、全日本手をつなぐ育成会、全国精神障害者家族会連合会の主要8団体。総合司会はJDの福井理事が務めた。兒玉日身連会長の開会挨拶のあと、DPI日本会議の中西理事がこの集会に至る経過報告を行った。


 そのあと、厚生労働省の基本的見解として、塩田障害保健福祉部長の説明があった。その中で塩田部長は、自分と障害者施策についての関わりにふれた上で、「障害基礎年金創設の折りには、障害者部局にいたが、障害者運動の大きな産物であった」と述べた。統合問題については「介護保険の良い部分を取り入れながら支援費制度の理念を発展させていくことが重要」と述べた。これからの障害者施策のポイントとしては“就労”に力を入れていく必要があるとし、「現在省内で就労問題の検討を横断的に進めている」と述べた。
 続いて同じ障害保健福祉部の村木企画課長から補足的な説明が行われた。主にデータに基づいて行われ、「去年の支援費実施状況をみると、いくつかの側面から市町村の格差が目立っており、三位一体改革で支援費が一般財源化されるならば、その格差はさらに広がることが予想される。国税も投入されている介護保険という制度を使い、標準化できるシステムも見逃せない選択肢である」と述べた。


 午後からは、厚生労働省と障害者団体らによるシンポジウム「徹底討論!これからの介護保険と障害保健福祉施策」を行った。厚生労働省からは障害保健福祉部の村木企画課長、高原障害福祉課長、矢島精神保健福祉課長がシンポジストとして参加した。団体からは、笹川日盲連会長、松友育成会常務理事、妻屋脊損連合会長、良田全家連相談室長がシンポジストにあたった。コーディネーターは、ジャーナリストの大熊由紀子さんと、JDの藤井常務理事があたった。
 矢島精神保健福祉課長は「社会的入院を解消するには、社会復帰施設の役割が重要であるが、昨年度は予算をあまり確保できなかった。介護保険のメニューを使うことによって財源を確保できる。精神障害者の分野としては大きなチャンスである」と発言した。高原障害福祉課長は、“障害者(児)の地域生活支援のあり方に関する検討会”の経過を中心に説明し、「全身性障害者など長時間介護が必要な人たちに、どういうサポートが必要なのか今後の課題であるが、支援費のサービスが予想以上に伸びた中、適切な国庫補助基準の見直しを急がなければならない」とした。
 これに対して笹川日盲連会長は「スタートして1年しか経っていない支援費をもう見直すのは問題」と述べ、松友育成会常務理事は「全体的な流れをきちんと見据え、脱施設につなげられるように現実的な判断も必要」とした。また妻屋脊損連合会長は「5年ぐらい状況をみた上で見直しをするのならわかるが、今回のようなことには賛成できない」と述べ、さらに良田全家連相談室長は「精神障害者が他の障害と比べ、施策が大きく遅れている現実があるので、財源問題を含めそれを解決していくことが今求められる」と発言した。
 このあと、知的障害の立場からピープルファーストの佐々木さんが「1割自己負担などできず、介護保険には絶対反対」、精神障害の立場から「こらーるたいとう」の加藤さんも「施設ではなく地域で暮らしたい。まず、支援費制度を精神障害者にも適用してほしい」さらに、難病の立場から全難連の山本さんが「難病もいろいろ。安心して地域生活をおくれるような支援体制の確立が求められる」などと指定発言を行った。
 質問の「違う選択肢があるのか」に対して、村木企画課長は「三位一体改革の一般財源化の流れの中で、国としての支援費制度がなくなっていくか、一般財源化を避けられたとしても毎年予算か不足するのは明白で、国会議員を動かして確保していくにも限界がある」と答えた。
 また、「統合した場合の中身がよくわからない」との質問に対して、「こちら側の姿勢を大筋でまとめておくことが必要で、その後、経営者団体や様々な関係者との調整が求められ、国民的議論の中で固めていく必要がある」との認識を同課長が示した。
 さらに、「6月に経済財政諮問会議の骨太方針が示されるが、そこで障害者施策の一般財源化がどうなるのか、社会保障審議会障害者部会での議論とともに、参院選の後、秋口が大きな山場を迎えるであろう」との見通しを示した。
 コーディネーターの大熊由紀子さんは、「介護保険に何が何でも反対という状況ではないかもしれないが、24時間介護のシステムは世界的にはもはや当たり前となっていることを厚労省にはわかってほしい」と述べた。
 また、藤井JD常務理事も「所得保障や扶養義務問題などの、障害者施策の基本問題の解決が早急に求められている。さらに来年は精神保健福祉法の改正の年であり、その中に精神障害者の福祉問題をきちんと盛りこんでいく必要がある」との考えを示した。さらに、「8団体による運動の意義は歴史的であり、極めて大きい」とした。最後に、森日身連事務局長が、新たな決意を示す内容の閉会挨拶を行い、この日の公開対話集会の幕を閉じた。


 この日、厚労省側は率直な考えを示したと言える。しかし、新しい制度になった場合の具体的なデザインはやはり明らかにされずじまいであった。「自分の生活がどうなるのだろう」と戦々恐々としている参加者との間の溝は縮まったとは決して言えない。

(5月6日発行・障害連FAXレターNo.78(編集人・太田修平氏 = 中央障害者社会参加推進協議会委員)転載





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