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介護保険・支援費制度統合問題で中間報告案を提示
 ~社保審・障害者部会
2004/06/08
  厚生労働省主管・社会保障審議会障害者部会(京極高宣座長)では6月4日、支援費制度について「介護のサービスを介護保険制度に組み入れる方向が有力な選択肢」とする中間報告書原案(以下参照)を示しました。
 これは、京極座長から原案作成要請を受けていた高橋紘士委員(立教大学教授)ら学識経験者の3委員が、同日の部会で提示したものです。
 原案ではこのほか、介護保険で考える「介護」の範囲を整理し「介護」の範囲に収まらない施策は、障害特性などを踏まえ別建ての施策・制度体系を構築することの必要性などを指摘。「介護保険でまかなう施策」と「保険外の障害者施策」の2本立てで障害者施策をカバーするねらいです。
 一方で、当日の部会に出席した委員会からは「障害者に適ったケアマネジメントの整備はどうするのか」「利用料1割負担は、低所得者の多い障害者には困難」「障害者の不安を払拭するような具体的な提示を」などの意見が出され、今後の課題も浮き彫りになっています。
 厚労省としては、6月中に統合に関する是非についての(障害者部会としての)方向性を固め、同審議会介護保険部会に投げかけたい意向です。
 障害者部会ではその間に、日身連や日盲連を含む障害者8団体からヒアリングも実施(6月18日予定)しながら、詰めの検討が進められることになります。統合問題はいよいよ大きなヤマ場を迎えようとしています。
  

<資料>

  「障害者福祉を確実・安定的に支えていくために」
~支援費制度と介護保険制度をめぐる論点の整理と対応の方向性~

                             平成16年6月4日

                 社会保障審議会臨時委員 高橋清久
                 社会保障審議会臨時委員 岡田喜篤
                 社会保障審議会臨時委員 高橋紘士

報告にあたって

 われわれは5月31日における障害者部会長からの委嘱を受け、短期間ではあったが、今後の障害者福祉制度の方向づけについて、鋭意検討を行い、意見をとりまとめたので、以下の通り報告する。
 何らかの障害によって社会的支援を必要とする状態がすべての国民に共通の可能性として起こりうるという事実に鑑みて、障害者福祉をすべての国民の理解と協力を得て、推進することが必要となっている。このような認識に基づいて、障害を有する状態におかれた場合にその尊厳が確保できるような支援のしくみを構築することが重要であると考える。
 重要なのは、障害を有する人々がその自己決定にもとづいて、必要な福祉サービスを活用して地域で生活を営むことができるような支援の制度を良質かつ適切なサービスが提供できる持続可能な安定した制度として確立することが緊急の課題であると考える。
 これは国・地方公共団体の責務であると同時に、このような制度の確立にあたって障害当事者はいうまでもなく、広く国民各層の理解と協力と参加によって、具体化することが望まれる。
 また、支援費制度は、身体障害者や知的障害者の生活を支援する仕組みとして高い期待をもって発足したものであり、その制度的成熟は今後に委ねられているので、本来ならば、数年の経過をみて現実的な評価と今後の展望を明らかにすべきところである。しかしながら、後に述べるような様々な状況の変化や制度的課題を勘案するとき、発足したばかりとはいえ、支援費制度の将来について、速やかにその見通しを立てる必要があり、確実・安定的な仕組みを模索することが重要である。
 そもそも障害者福祉は従来から障害種別の対策が縦割りに分立し、縦割りの制度のなかで、支援に格差が生じたり、縦割りの制度のために障害の状態にあっても適切なサービスが活用することができにくい状況におかれたりすることがあり、今も解消されているとはいえない。
 今後の障害者福祉制度の再構築にあたっては、このような事態を打開し、すべての障害を有する国民が利用できる普遍的な制度であると同時に、支援が必要な障害の状態と程度に応じて必要なサービスを活用して、地域での生活が可能となるような、個別的対応も可能となるような制度構築が重要である。
 以下に、障害者福祉制度の経緯を整理し、介護保険制度との関連も含め、その問題点と課題を明らかにしたうえで、今後の方向性について提案を行うこととした。


1.障害者福祉制度と介護保険制度の経緯

(1)介護保険制度における障害者の位置づけ

 ○ 介護保険制度創設当初から、若年の障害者を対象とするかどうかは、法律上も、今後の検討課題として、積み残されていたものである。
 ○ 介護を要する高齢の障害者は、介護保険を既に利用している。

(2)契約制度に転換した支援費制度の財政方式のあり方

 ○ 福祉サービスの利用については、大きな流れとして、自己決定の尊重や利用者本位の理念に立って、措置制度から契約制度に転換してきている。
 ○ 障害者福祉は、支援費制度によって措置制度から契約制度となり、高齢者福祉は、介護保険制度によって措置制度から契約制度となった。
 ○ 契約制度のもとで、その理念を活かし、維持していくためには、税方式による制度と、国民の共同連帯(支え合い)の考え方に基づく社会保険方式のいずれがより望ましいのかということが問題となる。


2.支援費制度をめぐる状況の変化

(1)サービスの利用の伸び

 ○ 平成15年4月からの支援費制度の導入により、ホームへルプサービスやグループホーム等のサービス利用が急速に伸びてきている。
 ○ 今後、さらに利用者が増え、利用が急速に伸びることも予想されるが、これに確実に対応していく必要がある。
 ○ また、支援費制度のもとでは、サービスの利用状況に大きな地域差がみられ、この地域差を縮小していくことも課題である。

(2)三位一体改革による地方分権の推進

 ○ 政府として、地方分権を推進し、住民に身近な自治体が地域の実情にあった形で責任を持って行政を推進するため、平成16年度からの3年間で4兆円の国庫補助負担金を削減し、権限と財源を地方に移譲する方向が打ち出された。
 ○ 障害者福祉をはじめ福祉施策の国庫補助負担金について、全国市長会等から一般財源化が求められている。


3.制度的な課題

 ○ 精神障害者、障害児(施設サービス)は、支援費制度の対象に含まれておらず、別立ての制度になっている。
 ○ 税方式を基本としたままでは、障害者問題が国民的な議論の対象となりにくく、結果として、地域生活支援の展開が図りにくい。
 ○ 支給量等の決定についての詳細な基準がなく、これも地域差の原因となっていると考えられる。
 ○ 障害の程度や状況に応じて、適切なサービス利用を促進し利用者の自己決定を支援するためのケアマネジメントが制度化されていない。
 ○ 障害種別や年齢によって福祉制度が縦割りになつており、身近なところでサービス提供するための高齢者介護サービス資源等の有効活用が難しい。
 ○ 安定的な財源が確保されておらず、サービスの伸びに確実かつ計画的に対応することが難しい。
 ○ また、契約制度を支える上で必要な権利擁護の仕組みが十分とはいえない。
 ○ 措置制度時代からの課題である、地域生活の保障や就労支援、重度な障害者への対応などが進んでいない。


4.支援費制度改革の方向性

 ○ 以上のような諸課題を解決していくためには、今後、客観的な制度上の基準や手続きを定めるとともに、安定的な財源確保を図ることができるようにした上で、ケアマネジメント制度の導入、精神障害者や障害児等を対象とすること、計画的なサービス提供体制の整備、政策課題への対応などを進めていく必要がある。


5.介護保険制度との関係

 ○ 前述したような支援費制度の改革の方向性を考えた場合、
  (1)支援費制度をこのまま継続する方向
  (2)介護のサービスを介護保険制度に組み入れる方向
   がありえるが、自己決定の尊重などの理念を堅持しつつ、制度的な諸課題を着実に解決していくためには、支援費施行後の状況の変化も勘案すると、(2)が有力な選択肢である。
 ○ この場合、介護保険制度の枠組みを活用する障害者施策の範囲をどのように考えるかについて介護保険制度で対応する「介護」の範囲を整理するとともに、この「介護」の範囲に収まらない施策については介護保険制度とは別建ての施策体系を構築し、両者があいまって、障害特性を踏まえた障害者福祉の制度体系を構成する必要がある。
 ○ 制度設計に際しては、例えば、
   ・現行の要介護認定基準で、知的障害者や精神障害者等についての介護の必要度が適切に反映されるのか。
   ・支給限度額内では必要なサービス給付をまかなえない場合の対応をどうするか。例えば、施設から地域に移行する人の生活を保障する方策をどのように構築するのか。
   ・介護保険制度ではサービス利用時に応益負担が原則になるが、低所得者についての対応をどうするか。扶養義務者の負担をどう考えるか。
   ・介護と介護以外の分野を通じた障害者の生活全般にわたり、かつ、適切な内容のケアマネジメントをどのように利用者に保証するか。
   ・契約制度が実効あるものとして機能するための権利擁護の仕組みや成年後見制度の活用の在り方、および契約制度が機能しない場合の制度の在り方といった点を検証・議論し、適切な結論を得る必要がある。
 ○ この改革は、介護保険制度を、年齢、障害の種別、疾病の種類等を問わず、介護を必要とする人を国民全体で支え合うユニバーサルな(普遍的な)仕組みとすることができる。
 ○ このような仕組みのもとでは、サービスを必要とする人が確実に利用できるようになるだけではなく、「障害」を国民にとってより身近な存在とし、共生社会へ近づけることにつながるものである。
 ○ こうした制度改革の過程において、自己決定の尊重と自立した日常生活の支援という、介護保険制度が元来有する理念の確認と一層の徹底が求められる。
 ○ なお、上記の障害者福祉制度のあり方とともに、保健医療、住宅や所得保障、就労支援、バリアフリーの推進等の総合的施策の推進が必要なのはいうまでもない。

 この点については、今後、そのあり方について本部会で論議を深めるとともに、それぞれの場での検討が深められ、総合的な障害者施策体系の再構築が進むことを期待したい。

      (社会保障審議会障害者部会・6月4日提出資料より一部抜粋)


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