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障害者自立支援法案に関する統一要望書
日身連など8団体が提出
2005/04/08
  与党・公明党が4月7日、障害者自立支援法案について、日身連など8障害者団体からのヒアリングを実施しました。
 8障害者団体では、それぞれの立場から同法案についての検討を進めていますが、現時点で共通認識を持つに至っている課題などについて、速やかな解決などを訴える内容の統一要望書を提出しました。

 要望書の内容は以下のとおりです。


20054月7日

公明党
代表 神崎 武法 様

 

「障害者自立支援法」についての統一要望

 貴党に置かれましては、平素より障害保健福祉施策の推進にご尽力を賜り深く感謝申し上げます。
 さて、昨年10月に厚生労働省より出された「グランドデザイン」に基づき、今年2月10日、「障害者自立支援法案(以下、自立支援法)」が国会に上程されました。この法律案は、障害者施策全般にわたる見直しを図るもので、障害者をはじめ支援団体、地方自治体等、関係者に与える影響は極めて大きく、十分な議論と検討が必要です。
 これまでの障害者施策は、1981年の国際障害者年以降、ノーマライゼーションの理念に基づいて展開され、1993年障害者基本法や2000年の社会福祉法等で、「障害者の自己決定」「施設から地域へ」という基本方向が示されてきました。そして、障害者サービスは、「自立と社会参加」を基本に掲げ、生活実態をふまえたきめ細かな施策が進められてきました。家族への依存については、障害者の自立を阻害する重要問題として、障害者団体のみならず厚生労働省も共通の方向性として確認し、支援費制度(居宅生活支援)でも扶養義務者の範囲から親兄弟が外れました。このように、高齢者施策等との「整合性」だけでは解決し得ない、重い課題が障害者施策には課せられています。
 障害者の置かれている実態やこれまでの施策展開との整合性の検証を図っていく、丁寧な検討が必要であると考えます。貴党に置かれましては、こうした点にぜひご理解いただき、自立支援法につきまして、以下の点を国会の場で取り上げていただき、ご議論いただきますよう、要望いたします。


1.利用者負担の見直しについて
・ 「応能負担」から「応益負担」への転換は、利用者にきわめて大きな影響を与えるものです。その前提となる所得の保障が未確立であり、負担の見直しに当たっては、少なくとも、障害者の所得保障確立のための方策と一体的な検討を進めてください。
・ 現在の案では、「扶養義務を廃止する」としながら、低所得者の負担上限額の設定は世帯収入に基づいたものとなり、さらに、減額措置も世帯収入に基づく方式となっているのは大きな問題です。これは、多くの障害者にとっては実質的には家族の負担増となります。医療公費助成の見直しも世帯収入に基づいたものとなっており、これでは低所得の状態にある多くの障害者がサービスを希望しても利用できなくなります。自立の第一歩は家族への依存からの脱却であることをふまえ、世帯単位の収入ではなく、障害者本人の所得に基づく上限設定・減額措置の仕組みとして下さい。
・ 就労移行支援事業、就労継続支援事業(雇用型・非雇用型)、生活介護事業(生産活動に対して)における利用者負担案は撤回して下さい。

2.評価尺度・基準および市町村審査会について
・ サービス共通の評価尺度・基準および市町村審査会は、これまでの支援費制度のあり方を根本から変更する内容を伴うものとなっています。そうした大きな変更に当たっては、障害者の多様な特性とニードをふまえたものとする必要があり、障害者団体との合意形成が不可欠であると考えます。特に、医師や専門家のみが判定するとすれば、障害者の地域生活の実態とはかけ離れた医療モデルになりがちで、生活に大きな影響を及ぼすものとなりかねません。
・ 「現段階で示されている支給決定方式では、特に重度障害者に対する支援水準が現行より低下するのではないか」、こうした不安が当事者や関係者の間に広がっています。評価尺度・基準や市町村審査会の支給決定のあり方に関する事項について、社会生活モデルを基本とした支給決定方法・仕組みを作っていくために、厚生労働省内に障害団体代表者を含めた新たな検討機関を設置するよう働きかけてください。また、重度障害者の一人暮らしを想定した長時間介護サービスが確保されるような区分と国庫負担基準とし、市町村がサービスを維持できるような負担金の仕組みとして下さい。
・ 市町村審査会の機能には、「障害程度区分の二次判定」と「非定型な支給決定の審査」の二つが想定されています。しかし、これまで国の進めてきた障害者ケアマネジメントでは、「非定型のサービス利用」は相談や体験を通じたエンパワメントや利用調整の課題とされてきました。障害当事者と初対面の委員が審査することは、これまでの障害者ケアマネジメントの趣旨からも反しかねません。審査会の機能については、「障害程度区分の二次判定」に限定してください。

3.精神障害者通院医療費公費負担制度について
・ グランドデザインでは、「今後10年間で精神医療病床数を7万人削減」が示されていますが、そのための具体的道筋が不明確です。精神障害者の社会的入院の解消、地域社会での生活の具体化を早急に図るため法制度および社会資源の整備が必要です。
 通院医療費公費負担制度は、地域生活を送りつつ服薬を継続し、また、再発防止や自殺予防の為にも不可欠のものです。精神障害者並びに家族への負担強化は医療の中断等を引き起すことになります。社会的に精神障害者に対する差別が根強い現状の中で、大きな役割を担ってきた通院医療費公費負担制度については実態をふまえて継続をさせて下さい。

4.移動介護について
・ 移動介護サービスは、「障害者固有のニード」に対応する社会参加サービスの根幹をなすものであり、特に、支援費制度によって、知的障害者の移動介護は全国に広がり高く評価されてきました。
 自立支援法では、移動介護は、重度訪問介護や行動援護以外は地域生活支援事業に整理されることになっています。しかし、移動介護は、視覚障害者にとっても通院時の付き添いなど生活する上で不可欠なサービスであり、生命に関わる問題です。そのため、自立支援法の内容が明らかになるにつれ、視覚障害者団体からも「移動介護は個別給付にすべきである」との強い要望が出されるようになっています。また、知的障害者にとってはコミュニケーション支援や見守り支援を伴ったものであり、家族以外の者の介護による外出を通じて生活や自己決定の幅を広げることが、地域生活の前提になっているのです。そうした移動介護を地域生活支援事業に位置づけるならば、障害者の地域生活、社会参加を揺るがすことになりかねません。
・ 上記の点をふまえて、移動介護を全て個別給付とし、加えて精神障害者の移動介護についても、同等の位置づけとしてください。
 なお、コミュニケーション支援については、地域生活支援事業の基本事業に位置づけられてはいるものの、財政面での不安定感は拭えません。サービス水準の後退や市町村格差が拡大することの無いように、法的な位置づけを明確にするとともに、充分な財源確保を行って下さい。

5.グループホームについて
・ これまでグループホームは、地域生活の場として、施設から地域への移行のための社会資源として大切な役割を果たしてきました。自立支援法では、「共同生活介護(ケアホーム)」と「共同生活援助(グループホーム)」の障害程度別の二種類が設定されており、これまでのグループホームからどう変わっていくのかが不明です。
・ 障害程度別に住む場所が振り分けられるとするならば、グランドデザインの基本視点に掲げられている「総合化」に反しますし、現にグループホームで暮らしている者の居住権に関わってきます。障害程度に関わらず共に住むことができるようにして下さい。
・ また、人数規模を大きくすることが検討されていると伝えられていますが、そうなれば「ミニ施設化」につながり、これまでの「地域生活の場」から大きく変貌することになりかねません。これまでの4または5人(精神障害者対象は5人または6人)規模を継続して下さい。
・ グループホームでの生活支援のみならず、ホームを拠点とした地域生活への参加が大切です。これを支援するための別仕立ての人的体制として、従来どおりホームヘルプサービス、ガイドヘルパーの利用を認めて下さい。

要 望 団 体

社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 会長  兒玉 明
日本障害者協議会 代表  河端 静子
特定非営利活動法人 DPI日本会議 議長  三澤 了
社会福祉法人 日本盲人会連合 会長  笹川 吉彦
財団法人 全日本ろうあ連盟 理事長 安藤 豊喜
社団法人 全国脊髄損傷者連合会 理事長 妻屋 明
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会 理事長 藤原 治
財団法人 全国精神障害者家族会連合会 理事長 小松 正泰




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