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国連・第7回障害者の権利条約特別委が閉会
 ~大きく進展見るも依然課題多く
2006/02/08
  1月16日からニューヨークの国連本部で開かれていた「第7回障害者の権利条約特別委員会」が2月3日に閉会しました。
国連・第7回特別委員会のようす
国連・第7回特別委員会のようす

 今回の委員会では、新たなたたき台として提示された条約草案である「議長テキスト」の各条文の審議が、ほぼひと通りおこなわれました。この議長テキストは、4年近くにわたって積み上げられてきた特別委員会での議論を踏まえ、委員会議長のドン・マッケイ議長(ニュージーランド国連大使)が必要な論点を取りまとめた上で提出したものです。
 そうしたことから、今回の委員会では、条文の存在そのものの適否よりも、条文内で規定する具体的な文言に関する議論に割いた時間のほうが多く、条約の議論もいよいよゴールが見えてくるかという段階まで進んだことを実感させる展開となりました。
また、3週間にわたる審議を通して、いろいろな流れが生まれ、また、新たに以下のような主要課題も明らかになっています。
 
・この条約で使われる文言の定義(第2条)の中に「障害に基づく差別」がある。これが直接差別だけでなく、他の人権条約でも規定されている間接差別を含むかどうか、合理的配慮の欠如などが盛り込まれるかどうかが今後の焦点となる。
 
・議長テキスト第19条で書かれていた「自立生活(independent living)」という文言については、日本政府が率先して支持を表明し、韓国やチリなど各国から高い評価を得た。一方で、そうした概念や施策がない、あるいは当事者運動の力が弱いアラブ諸国やイスラエル、中国などの国の懸念もあり、最終的に「自立して生きる(living independently)」などの文言に置き換えられる可能性もある。
 
・包括的な条文化をめざしている国が多いこともあり、個別の障害種別やその支援のための方策などについては、条文中に明記されないおそれがある。特に聴覚障害者への文字情報(字幕サービスなど)の保障や放送通信体制の整備などに関する文言が漏れることがないよう、一層のロビーイングが必要。
 
・議長テキストにあった手話の言語性や独自のろう者文化の存在については、一部の国を除いて否定意見は見られなかった。現在のわが国における手話の位置づけやろう者への情報・コミュニケーション保障のあり方を、条約が大きく変えるきっかけとなる可能性が出てきた。

・障害のある人の教育(第24条)に関しては、「インクルージョン教育という大きな流れの中で構成されつつも、その中で個々の支援ニーズに即した配慮・支援が保障される」という新しい考え方が、今回の審議で改めて承認された。しかし、日本政府は世界の潮流に敢えて逆らい、国内の特殊教育体制の維持にのみ固執し、「条文内にある『一般教育』という文言の『一般』を削除せよ」などの発言を連発した。こうした発言をおこなったのは日本政府のみで、こと障害児(者)教育施策に関しては、国際社会から完全に孤立するおそれがある。
 
・労働および雇用の条文(第27条)に関しては、日本政府が雇用割当制度(法定雇用率制度)を条文内に盛り込むよう発言したが、イスラエルなどが雇用割当制度の効果を疑問視する姿勢を示すなど、全体的な支持は得られず、日本政府の思惑どおりにはいかなかった。どのような形がよいのかも含めて、今一度、障害者団体側もしっかりした検討・提言が必要。
 
 以上の6つの課題のほかにも、たとえば「国際協力」のあり方などをめぐっては、合意に向けた大まかな流れがあるものの、各国間での調整に時間がかかる見通しです。
 次回・第8回障害者の権利条約特別委員会は、8月14日から同月25日の日程で開催されることが有力です。マッケイ議長は第7回委員会の最終日に「特別委員会として次回会期中に条約案を採択したい」という方針を示しましたが、会期が2週間と限られているため、採択まで至るかどうかは微妙な状況です。



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