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障害関係5団体が、尾辻秀久参議院議員(元厚生労働大臣)へ「障害者自立支援法」に関する要望書を提出 2006/08/28
  去る8月21日(月)15時から16時にかけて、参議院議員会館会議室にて、尾辻秀久参議院議員(元厚生労働大臣)と障害関係5団体が「障害者自立支援法」に関する話し合いを行い、同議員に対して、以下の要望書を提出しました。



                                    平成18年8月21日


参議院議員
尾辻 秀久 様



 平素より、障害保健福祉分野に強い関心をお持ちいただき、またその施策の増進にご尽力いただいていることに対し、心より敬意を表します。
 さて、障害者自立支援法が成立した今、新体制となる各種事業が障害者ひとりひとりの自立と充実した地域生活支援の推進を図るものなのかということが、日身連における最大の関心事であります。
 ついては、下記の諸点につきまして、特段のご配慮をいただきたく、ここに要望するものです。障害のある人びとの「自立支援」を名実ともに実質化させていくためにも、何卒よろしくお願いいたします。



                        記

Ⅰ.障害者自立支援法に関する要望事項

1.自立支援給付(義務的経費)に要する費用について、必要かつ十分な財源を確保すること(介護給付費、訓練等給付費、自立支援医療費、補装具等)。

2.裁量的経費である地域生活支援事業(市町村が実施主体となる裁量的経費)については、財源面での不安定さが懸念され、その重要性からみて予算確保にあたって特段の配慮をはかること(相談支援・移動支援・コミュニケーション支援・日常生活用具、地域活動支援センター等)。

3.地域生活を支援するための物的ならびに人的なサービス基盤整備について、これを飛躍的に拡充するための法的な根拠を備えた特別の策を講ずること


Ⅱ.国会での附帯決議等に関する要望事項

1.衆議院での「附帯決議に関する申し合わせ」(平成17年10月28日)ならびに参議院での「附帯決議」(平成17年10月13日)、衆議院・参議院での政府答弁については、これらを確実かつ速やかに具体化すること。

2.附則で明記された「障害者の範囲」(第三条1項)ならびに「所得の確保」(第三条3項)の検討については、予算確保を含めて速やかに結論を出すこと。


Ⅲ.政令、省令等に関する要望事項

1.利用者負担について

1)障害福祉サービス及び自立支援医療の利用者負担の上限を決める際の所得の認定にあたっては、障害者の自立の観点から、生計を一にする世帯の所得ではなく、障害者本人の所得のみ(世帯分離)とすることを、利用者を含め関係者に周知徹底すること。

2) 障害福祉サービス及び自立支援医療、補装具の複合利用にあたっては、その合計を負担額とせず、障害福祉サービスの月額負担を上限とする制度にするよう軽減策を講じること。

3)就労関係の施設や事業(就労移行支援事業、就労継続支援事業等)は、「働く」ことを目的としており、類似の機能を有する職業能力開発事業等との取扱いの整合性から考えても、利用料を取ることは認められない。

4)施設生活する障害者の負担軽減措置として、食費や居住費以外の「その他の生活費」として一定の額が残るように、「補足給付」制度が設けられているが、その額は障害者が地域生活へ移行するための準備に相応しい水準にすること。

5)現行の同額自己負担上限額については4区分であるが、所得課税等に応じて細かく区分した上で、きめ細かく対処すること。


2.新規事業・施設制度について

1)各種新規事業における利用者へのサービス及び職員配置基準(報酬基準)については、現行の水準を下回らないこと。また、そのための充分な検証を実施すること。

2)グループホームへのホームヘルパーの導入にあたっては、事業所に対する補助金の加算制度を設けること。また、グループホームならびにケアホームの設置場所については、地域生活の推進という観点から医療機関・入所施設の敷地内での設置を認めないこと。


3.自立支援医療について

1)医療上の必要性から継続的に相当額の医療費負担が発生する者への月ごとの負担上限の範囲については、必要な見直しを図ること。

2)「重度かつ継続」の範囲の検討にあたっては、国際基準に沿うものとし、とくに当事者団体の意見を尊重すること。


4.重度障害者の介護保障について

1)重度訪問介護の報酬基準については、サービス提供者を確保するという観点から現行基準をさらに引き上げること。

2)在宅系の重度訪問介護・居宅介護・通所介護における市町村での予算執行にあたっては、障害程度区分間の流用を弾力的に行なえるようにすること。

5.障害程度区分について

1)障害程度の認定にあたっては、障害の特性ならびに環境因子等を十分に配慮すること。
2)障害程度区分については、社会生活を主体とした調査項目とし、さらなる改善を図ること。また、障害者団体等、障害当事者からの意見を十分に尊重し、その上で見直しを図ること。


6.市町村審査会について
1)審査会には、障害保健福祉分野についての知識と経験を有する障害当事者を積極的に登用するよう、市町村に指導すること。

2)二次判定において、障害実態を的確に把握するために、環境要因やサービス利用状況(試行事業で言う概況調査)を積極的に活用するとともに、医師の意見は最小に留めること。

3)審査会において二次判定ならびに「非定型のサービス利用者に対する審査」についての検討が行われる際に、本人が希望する場合は審査会に出席できるものとすること。

4)二次判定ならびに「非定型のサービス利用者に対する審査」にあたっては、一次判定以上に個人情報が関与してくることを鑑み、個人情報保護の観点からの手続き規定を設けること。具体的には、「非定型の支給決定」について市町村が審査会に意見を求める場合は、本人の意志確認(同意書方式等)と提出資料の本人への開示を義務づけること。


7.補装具・日常生活用具について

1)ストマ用装具については、オストメイトにとり日常生活をおくる上で必要不可欠な装具であり、また市町村による給付条件に格差のない安定的な給付が求められることからも、現行通り、補装具として取り扱うこと。

2)視覚障害者ならびに聴覚障害者、盲ろう者の社会参加を進めるため、日常生活用具給付事業の対象の拡充を図ること。とくに、通信ネットワークを利用した情報コミュニケーション支援を推進すること。


8.移動介護について

1)地域生活支援事業における移動介護の支給決定に際しては、障害当事者もしくは関係者からの利用意向を十分聴取し、支援費の支給決定で使われている勘案事項を踏まえて決定すること。

2)視覚障害者や盲ろう者等、比較的数の少ない障害者に対しても適切なサービスが供給できるよう、確実な体制整備を図ること。
3)サービス提供事業者の指定にあたっては、適正さと質を担保する観点を第一に、その方策を講ずること。


9.コミュニケーション支援について

1)手話通訳と要約筆記ならびに触手話、指点字等を同格と位置づけ、その質と量を確保するための必要な体制整備を図ること(地域生活支援事業に関するガイドライン作成にあたって、この点を留意すること)。

2)聴覚障害者情報提供施設をコミュニケーション支援事業に位置づけること。


10.相談支援事業所について

1)市町村の相談支援事業の推進にあたっては、市町村障害者生活支援事業、障害児(者)療育等支援事業、精神障害者地域生活支援事業を中核として展開すること。

2)障害者の地域における自立と社会参加を促進するために、都道府県障害者社会参加推進センター設置事業を必須事業とし、併せて地域の障害者相談員や権利擁護相談事業等の専任相談員の明確な位置づけを講ずること。


11.小規模作業所について

新たな事業体系への移行を希望する小規模作業所に対して、障害者基本法の関連条項をも配慮しながら、スムーズな移行の実施を図ること。また、法定化できない作業所に対して、施設運営ができるように救済的な措置を講ずること。

Ⅳ.障害者自立支援法施行後における自治体間の格差に関する要望事項

 障害者自立支援法施行1ヶ月を経過したなかで、負担基準を軽減する自治体間の格差が生じている。このことは、本法の制定理由の一つである「各自治体における福祉サービスを提供する体制の大きな格差を解消する必要がある」ということに逆行する事態である。この現況について、緊要な方策を講じていただきたい。

Ⅴ.その他

障害者自立支援法の10月施行によって、「従来のサービス(特に長時間滞在型サービス)の水準が極端に引き下がる」ケースが生じる恐れがあり、市町村が混乱している。この事態を収拾するために必要な措置を講じていただきたい。

                                        以 上


要望団体 
社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 会長  小川 榮一
社会福祉法人日本盲人会連合 会長  笹川 吉彦
社団法人全国脊髄損傷者連合会 理事長 妻屋  明
社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会 理事長 藤原  治
財団法人全国精神障害者家族会連合会 理事長 小松 正泰



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