平成29年11月8日 自由民主党 組織運動本部厚生関係団体委員長 新谷正義 様 政務調査会厚生労働部会長    橋本 岳 様 社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会  会 長  阿部 一彦 平成30年度予算・税制等に関する日身連の要望  日頃は、障害者施策の向上のために特段のご高配を賜り深く感謝申し上げます。  日身連といたしましては、障害者権利条約の締約国である日本が、障害の有無にか かわらず、個人の尊厳が尊重され、安心した暮らしが築ける共生社会を実現するため に、条約のスローガンでもある“Nothing about us, without us”を踏まえつつ、条 約の内容が反映された法制度の整備と、障害及び障害者に対する国民的な理解が一層  促進されることを期待しています。その期待を具現化していただけるためにも、下記 要望について、特段のご配慮を賜りますよう何卒よろしくお願いいたします。   記 Ⅰ.予算に関すること 1.  障害者差別解消法が平成28年4月に施行され、障害を理由とする差別の禁止と 合理的配慮の提供に対する理解啓発の推進と同様、2020年オリンピック・パラリ ンピック東京大会の成功にむけ、政府においては『ユニバーサルデザイン2020 行動計画』により財政的な担保も含めたユニバーサルデザインの街づくりと心の バリアフリーの促進に取り組んでいただいているところですが、関係省庁におけ る検討の場においては、引き続き、障害当事者や障害者団体等関係者の意見を踏 まえながら進めていただきたい。  また、こうした流れが、都市部だけでなく地方部への波及効果を生む取り組み となるよう進めていただきたい。 ① 依然として、プラットホームからの転落等事故が多発していることから、ホーム ドアの設置といった安全確保に向けた対策をさらに進めていただきたい。 ② 海外からの来訪者への配慮を含め、ハンドル型電動車いすの方に対する新幹線を 含む乗車時の合理的配慮の提供や、UDタクシー及びリフト付リムジンバスの配 備を促進していただきたい。 ③ ホテルのバリアフリールームのあり方に関する検討については、法律上の基準(広 さや数等)のみにとらわれず、工夫や改善等で障害者が利用しやすい部屋や器具 の構築について協議することが有効であることからも障害者団体関係者等の意見 や提案を反映したものとなるよう検討を進めていただきたい。 ④ パラリンピック等競技スポーツを目指す選手に対する財政的支援を含めたサポー ト体制の充実とともに、生活を豊かにするための障害者スポーツについても、施 設利用の拒否や不十分な対応が起きないよう、施設・運営等関係者を含めた障害 理解の啓発について省庁間の横断的な取り組みに努めていただきたい。 また、競技場やスポーツ施設についても、安全面重視の上、施設のバリアフリー 化の促進を喫緊の課題として取り組んでいただきたい。 ⑤ 情報保障の確保は、日常的なことはもとより緊急時や災害時においても重要なこ とと考える。視覚障害者、聴覚障害者の方に加え、失語症や知的障害、発達障害 等、情報保障を必要とするすべての障害者に対し情報の提供が確保されるよう図 っていただきたい。(表示については、誰もが分かりやすいものに、可能な限り統 一することを検討いただきたい。このことは障害者だけでなく、高齢者や外国人 にも通ずることと考える。) ⑥ 同2020行動計画の完全実施をめざす上で、障害当事者が参画し、各施策について 議論が行えるよう、ユニバーサルデザイン2020評価会議を一日も早く設置してい ただきたい。 2.  心のバリアフリーに対する理解がしっかりと育まれるよう、教育の連携(幼稚 園・保育所、小中学校、高等学校、大学等)を踏まえ、学生ボランティアが全国 的に広がるよう具体的な取組みの好事例を一般化することにも力をいれていただ きたい。  さらにこうした取組みによる障害への理解促進が、子どもを通して家族や地域 に広がることも期待されることから、現在、学校等で行っている活動内容の点検 も含め、先駆的な事例を取り入れる等、一層の積極的な取り組みを促進していた だきたい。また、企業においても社会貢献活動の実績をあげていただいているが、 さらに社内の研修や接遇対応の向上に加え、障害者が活躍できる社会の意識改革 を障害者団体と協力していただけるよう、国等との連携を含め支援していただき たい。 3.  東日本大震災から6年半が過ぎた今も、約8万人を超える方が避難生活にあり、 複雑な問題を抱える現状は理解できるが、自治体と連携し、復興に向けた対策の 取組強化を図っていただきたい。  また、熊本地震や九州北部豪雨等で居住の場を奪われ、現在も仮設住宅等で避 難生活を続けている障害者からは困窮した暮らしの改善を求める声も聞かれるこ とから、相談支援を含め、また、民間団体等への資金援助等も併せて連携協力し、 支援体制の強化を図っていただきたい。さらに、東日本大震災以前から応急仮設 住宅の不備が問題視されてきたが、障害者が安心して入居できることを想定した 応急仮設住宅の仕様の在り方(規格の見直し等)について検討いただきたい。   4.  平成24年10月に施行された障害者虐待防止法においては、付則第2条(検討) で法施行後3年を目途に法制度全般の見直しの状況を踏まえ、法の施行状況等を 勘案し検討を加え、必要な措置を講じるものと規定されている。法の施行後もな お、障害者・児に対する虐待事件は後を絶たない現状にある。障害者権利条約で は、虐待の防止、保護するための措置が規定されており、締約国である日本とし て、以下について、速やかな対応をとっていただきたい。 ① 法第2条第2項「障害者虐待」に“学校”、“保育所”、“医療機関”等を加 えることを含め、あらゆる形態の虐待から保護される措置が講じられるように検 討いただきたい。 ② 都道府県・市町村における虐待の行為を受けた障害者に対する身体的・心理 的な回復のための措置(支援)の実態検証とともに、施設や事業者等における虐 待を防止するための体制強化に関する問題点の把握に努めるとともに、課題解消 にむけた対策に取り組んでいただきたい。 ③ 検討の場においては、障害者団体等関係者を含めた会議体での協議をもとに 進めていただきたい。 5. 誰もが活躍できる社会をめざした取り組みとして、働き方改革については、働く 人の視点に立った改革になることを期待している。障害者の就労は、障害の特性 から周囲の理解を得ることが難しいケースが多く、特に、職場環境に苦労をした り、本人の能力を十分に発揮できないことなどが課題の一つと考える。本人の希 望や能力をいかした就労支援が促進され、加えて、地域の特性をいかしつつ中高 年層の障害者への対応(配慮)を含め、障害の特性に応じて活躍ができるよう取 り組んでいただきたい。 6. 平成30年度の障害福祉サービス等報酬改定が予定されているが、共生社会の実現 と障害者の生活の質の向上のため、改定においては、前回の改定率を下まわらな い水準を確保し、改定の結果が、障害福祉サービスの基盤低下と障害者の暮らし の継続に支障を生じさせないようにしていただきたい。 7.  身体障害者福祉法の身体障害者相談員制度については、各都道府県等が行う身 体障害者相談員のための研修事業を地域生活支援事業として補助対象とする等の 措置をとっていただいているが、身体障害者相談員の委嘱が都道府県から市町村 へ委譲されて以降、委嘱に消極的な市町村や身体障害当事者以外の相談員に委嘱 される傾向が増えてきていることが報告されている。その一方で、障害者差別を 禁止する条例等にもとづく地域相談員として身体障害者を活用している自治体が ある等、身体障害者相談員の活用を重要視している自治体もある。行政機関の手 が及ばない、同じ障害をもつ仲間としての寄り添う相談支援を行ってきた身体障 害者相談員の役割の重要性に鑑み、相談員の方々が意欲をもって相談活動に励め るよう、活動のための財政的な支援確保を含め、自治体と連携した仕組みの強化 に向け指導をしていただきたい。 8.  障害者の一層の社会参加の促進を図る上で、交通等に関する諸課題の解決を図 っていただきたい。 ① JRの「ジパング倶楽部」については、障害者手帳所持者を対象とした枠を 設けて広く有効活用させていただいているが、東海道・山陽新幹線「のぞみ」 や九州新幹線「みずほ」が割引対象外となっており公平性が損なわれている ことからも、見直しの検討を早急に講じていただきたい。 ② JR等の運賃の割引取扱い区間については、第1種及び第2種心身障害者が 単独で利用する場合、片道100㎞を超える区間に限られており、日常生活上、 利用の頻度が高い100㎞以下には適用されていないことから経済的負担を大 きくしている。障害者の移動や社会参加等が損なわれないよう、制度の見直 しを講じていただきたい。 ③ 有料道路の障害者割引制度については、その対象を本人またはその親族等が 所有する自家用車1台とされているが、障害者の社会参加促進や重度障害者 等の利便性の観点から、現行制度における対象の要件を車両登録から障害者 手帳の提示にすることが実情に見合っており、早急に制度を見直していただ きたい。加えて、その料金割引の対象に障害者団体や福祉団体が利用する福 祉バス等まで適用の対象範囲を拡大していただきたい。 ④ 地方において、路線バスの縮小あるいは廃止がされつつある傾向がみられる が、バス以外の移動手段をもたない障害者にとっては大変困難な状況となっ ている。代替移送手段の確保を含め、移動手段が確保されるよう、地方自治 体等と一層の連携を図りながら対策を講じていただきたい。 Ⅱ.税制に関すること  社会的弱者である障害者の自立した生活が困難な状況に陥ることなく、安定安心し た生活の保障がなされるよう特段の配慮をいただきたい。 1. 一般税に関すること ① 所得税、相続税、住民税、固定資産税、自動車重量税等については、障害者 の負担軽減となるような減免対策を講じていただきたい。 2. 消費税に関すること ① 2019年10月に予定されている消費税の10%増税については、軽減税率を導 入して低所得障害者への救済措置が講じられる仕組みを検討いただきたい。 Ⅲ.その他 障害者福祉が向上する上において、個々の障害者の声を代弁し活動している障害者団 体の役割は極めて大きいと考えているが、その実績や貢献度に反して自助努力で障害 者団体活動の財源を確保することが厳しい現状下に置かれている。是非とも、障害者 団体の重要性に鑑み、現在の状況改善にむけた措置を講じていただきたい。 ① 障害者団体への助成制度といった安定かつ円滑な運用のための仕組み作り ② 身体障害者福祉法第22条(売店の設置)の見直しを含めた公共施設等の自動 販売機の設置・運営の優先的許可 ③ 心身障害者用低料第三種郵便物制度の抜本的見直し 以 上 1